「恋愛、結婚、出産」などをあきらめる“N放世代”
韓国では男女共に未婚者が増え続けており、この背景には、1997年の経済危機で非正規雇用が拡大したことなどが挙げられる。不安定な雇用状態が続いたことで、2000年代に入ると、若い世代は「恋愛、結婚、出産」をあきらめる3放世代と呼ばれるようになった。
年を追うごとに若者があきらめる対象は増え続けて、「5放」「7放」などと言われたが、今や数え切れないものをあきらめている、という意味からN放世代と呼ばれたりもしている。
また、98年にIT大国へと舵を切った韓国では、その頃から新しい価値観が流入し、儒教の影響が濃かった「家族の形」は刻々と変貌する過渡期のまっただ中にある。
そんな中、投じられた「非婚出産」の話題。
世論の高まりを受けて、韓国では、国会で「非婚出産」における精子提供や生殖補助医療についての法整備を進めるとしていて、11月25日には、大韓産婦人科学会が、「精子供与施術は原則的に法律的婚姻関係にある夫婦のみを対象に施行される」の中の「法律的婚姻関係」を「夫婦(事実婚=事実上の婚姻関係にある場合を含む)」に修正した。
非婚者についてはまだ議論が必要としているものの、「社会の声に耳を傾ける必要性を感じている」と発表している。
日本・欧米での現状は
日本でも、夫婦のみを対象にした「非配偶者間の人工授精」(AID)は認められており、日本産科婦人科学会が認定した医療施設が日本全国で12カ所ある。しかし、精子提供者が激減しているといわれ、1948年に初めてAIDを行った慶應義塾大学病院も2018年には新規患者の受け入れを中止している。これは、子どもが自身の出自を知りたい場合、精子提供者の個人情報の開示を求められる可能性がでてきたためといわれている。
欧米では合法の精子バンクがあり、日本でも利用する人が増えているといわれてきた。昨年2月に日本に進出したデンマークの世界最大の精子バンク「クリオス・インターナショナル」から精子を購入した日本人は約150人ほどいて、「その約7割がクリオス・インターナショナル社と協力関係にある日本の医療機関で人工授精や体外受精施術を受けている」(中日新聞、11月18日)と報じられた。
日本では、営利目的の精子提供を規制する会告(日本産科婦人科学会)はあるが拘束力はなく、ネットで精子提供をするケースも増えていて、感染症などの安全性が取り沙汰されている。
「生殖補助医療法案」では第三者の卵子、精子を使う生殖補助医療を巡る親子関係を明確にする民法の特例法案が参院で11月20日に可決されたが、卵子、精子の斡旋などについては2年後をメドにするなど先送りされている状態だ。
それにしても、日本も少子化といわれる中、非婚出産などの実態はひっそりと進んでいるのに議論が盛り上がらないのはどうしてなのだろうか。