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――対局されたのが2年前で、その2年後の今年、藤井二冠になったわけですけど、それは早いという印象ですか?

井上 僕は、2年でタイトルを取られるとは思っていませんでしたね。藤井さんは、強くなられるとは思っていましたが、トップの方がみなさん若くて充実されているんで、なかなかタイトル奪取まではいかないんじゃないかなと思いました。ただ、2年前、僕が対局させていただいたときより、大駒1枚分くらい強くなられていると思います。

 

 井上九段がデビューされたのは1983年のこと。プロ棋士生活も、もう37年という大ベテランであるが、藤井聡太との対局で勝ちになったとき、あまり経験のないほど胸がドキドキした――。そんな逸話から、改めて藤井聡太に勝つということの意味を感じた。

「羽生七冠に初めて勝った棋士」という異名も

 井上慶太九段は、「藤井六段に唯一勝った棋士」とともに「羽生七冠に初めて勝った棋士」という異名も持っている。これは、羽生善治九段が1996年2月14日に七冠となり、その6日後の対局で羽生七冠に勝ったためである。

 井上慶太九段は、A級と竜王戦1組に在籍経験がありながら、タイトルへの挑戦がなく、このことは「将棋界の七不思議」のひとつとも言われている。こんな背景があるため「羽生七冠に初めて勝った」という話を向けると「そうなんです。もうそんなんしかないかなと(笑)」と笑いながら、羽生善治という棋士との対局人生を振り返ってくれた。

 

井上 羽生さんは、僕のほうがちょっと先輩で、C級2組のときから半年に1回くらい対局する感じのときがありまして。それで、最初は私が2連勝したんですよ。1局目のとき、羽生さんは中学生棋士でしたけど、私が指した感じでは序盤がちょっと甘いといいますか。ま、そこを突いてなんとか逃げ切った感じでした。2局目も順位戦でした。これは激戦でしたが、なんとかしのいで勝った。

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 ただ、3局目くらいですかね。「あれっ? えらく強くなったん違うかな」って。で、負かされて。4局目、5局目くらいから、全然、届かん雰囲気になってきたなと。そのあとはタイトルも取られて……という感じです。

――ではプロになられてから、一層、強くなられたと。

井上 伸び方が違うなと。藤井さんの場合は、デビューのときから、それほど穴は感じませんでしたが、羽生さんは、ちょっと序盤が甘いと言われてましたが、プロ入り2年目、3年目くらいは隙のないような感じになりましたね。