2015年「慰安婦合意」との整合性は
日本と韓国が2015年12月28日に合意した「慰安婦合意」との整合性はどうなるのだろうか。
この合意により日本政府が10億円を拠出して設立された「和解・癒し財団」からは、当時存命していた47人の元慰安婦の中で35人が1人当たり1億ウォン(約950万円)、遺族64人が1人当たり2000万ウォン(約189万円)を受け取っている(韓国女性家族省)。この99人が原告に含まれているかどうかについて前出の金弁護氏に聞いたが、名簿が公開されていないので分からないという答えだった。
文在寅政権に入って、合意過程には当事者である元慰安婦が関わっていなかったという立場から検証チームが作られ、18年11月には「和解・癒し財団」を解散することを一方的に決め、19年1月、財団は事実上解散させられた。
さらには、同じ年の12月には、「慰安婦合意は違憲」として元慰安婦らが韓国の憲法裁判所に提訴した。憲法裁判所は訴えを却下したが、その理由を「法的拘束力のない政治的合意にすぎず条約ではない。従って被害者の基本権を直接侵害するものではない」とし、韓国ではこれをもとに今回の裁判との「整合性についての問題なし」と解釈されている。
国際社会には「人権問題を無視する日本」という認識も
中道系韓国紙記者は言う。
「元慰安婦被害者が求めているのは日本の首相の謝罪とそれに伴う賠償です。慰安婦合意ではその合意過程に自分たちは存在せず、謝罪もなかったと主張しています。確実な内容でなければ、人権問題という観点からこうした裁判は今後も続くのではないでしょうか」
現在、存命している元慰安婦は16人といわれ、意思疎通がはっきりとできる人は少ないといわれる。
支援者側の声は大きくなるばかりだろう。
昨年9月、ドイツ・ベルリンに設置された少女像を巡り日本政府は強く抗議したが、現地の支援者が中心となり異議申し立てされ、結局、設置された。国際社会には「人権問題を無視する日本」という認識だけが残った。
相手が納得しない謝罪は謝罪ではないという反論もあるだろうが、韓国社会では「女性のためのアジア平和国民基金」や「慰安婦合意」についての詳細は広く知られていない。
日本はまず韓国社会に向けて日本が積み重ねてきたことを広く知ってもらうよう働きかける時ではないだろうか。