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警察に逆らっても無駄
ところが同じ公判廷で詩織は注射した時間を警察供述書とは異なって、こう証言している。
弁護人 インスリンは何時ごろ注射しましたか?
被告人 時間たってたけれど朝ごろ。明かりがさしてきましたから。
弁護人 どこに注射したか?
被告人 腕。どっちの腕だか覚えていません。
弁護人 量は?
被告人 半分過ぎ(1本の)。
弁護人 注射器のダイヤル回し、何回したのか記憶はありますか?
被告人 冷静でなかったので。2~3回ぐらい。
詩織の日本語は必ずしも完璧ではない。従って、警察や検察での取り調べの際、質問をどれだけ正確に理解していたかは不明だが、公判記録で見る限り、逮捕直後の彼女は、犯行時間を取調官の言うままに供述した可能性もあっただろう。警察に逆らっても無駄という、諦念があったことが手記からはうかがえる。この時点で詩織に、犯行時間が殺意の有無の判定を左右するかもしれない、という認識はあったのだろうか。
その後、公判廷における弁護士とのやりとりから、朝方に注射したと記憶を修正し、手記の中でも、私との面会時にも朝方と主張している。この部分の詳細はさらに後章に譲るが、「放置時間」は検察と弁護側の、公判途中からの水面下の大きな争点となっていたのだ。
こうしたやり取りを経て、詩織の控訴審判決は07年9月19日と決まった。