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連載この鉄道がすごい

取材写真は15000枚以上 『電車でGO!!』開発チームがこだわった細かすぎる再現性とは

『電車でGO!! はしろう山手線』のリアル #1

2021/01/23

新しい電車ほど運転がラクで、古い電車ほど運転しにくい

 過去作も現実とゲームのバランスを熟慮して走行特性を設定しているから、それがシリーズの基準になっている。たとえば過去作の205系電車と新作の205系電車で操作感覚が違うとなれば違和感がある。シリーズのファンにとって、E231系はすべて同じ性能を持つ。その方がゲームファンにとってありがたい。

 この「基準性能車両」に合わせて、新型電車は加減速の性能を上げ、旧型電車は性能が劣るという傾向を設定したという。旧式は加速も遅いしブレーキも効きづらい。運転士の操作と電車の挙動に微妙な遅延もある。つまり、新しい電車ほど運転がラクで、古い電車ほど運転しにくいという性能が設定されている。

山手線以外のJR各線の車両も見ることができる © 2021 TAITO © SQEX JR東日本商品化許諾済

「いくつかパラメーターを持たせていて、車両によって変えています。このほかにも、雨の日はブレーキが効きにくい、乗車率が低い方が走りやすい、といったパラメーターもあります。103系と205系は古すぎて車両のディテールの情報がないので、車体のモデリングの再現に苦労しました。資料を集めて詳しい方にお話を伺ったり、地方で稼働している場合は見に行ったり」

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BGVとしても楽しめる仕組み

『電車でGO!! はしろう山手線』には、制限などの制約がないフリー走行モードと、運転せずに景色を楽しむ展望モードがある。フリー走行では、虚構新聞というジョークサイトが記事化した「西日暮里発日暮里行きノンストップの日暮里ライナー」も再現可能だ。ただし、制限のない運転は飽きやすい。

 それなら運転もしないで景色を楽しむ展望モードがいい。最新の高輪ゲートウェイ駅、埼京線プラットホームを建設中の渋谷駅、ママ鉄子鉄が集う日暮里の「下御隠殿橋」、山手線唯一の踏切「第2中里踏切」、浜松町駅3・4番線プラットホームの小便小僧など、山手線には名所が多い。東京に縁がある人なら誰でも、山手線にまつわる思い出がある。ホームパーティのBGVにピッタリだ。「ああ、もう山手線を1周したみたいだから帰るか」などなど。

新たに登場した高輪ゲートウェイ駅 © 2021 TAITO © SQEX JR東日本商品化許諾済

 展望モードは自動運転だ。模範運転だから自分で運転するときの参考になる。自分で運転するときは景色を観る余裕がないから、リアルな風景をのんびり楽しめる。しかし、山手線では自動運転の取り組みが始まっているから、将来は自動運転モードの方がリアル、という評価になるかもしれない。

 実は、山手線の自動運転の取り組みは一部で始まっている。『電車でGO!! はしろう山手線』は、リアリティを重視した電車運転ゲームだったけど、思わぬところでリアリティを失ってしまった。

写真=杉山秀樹/文藝春秋

取材写真は15000枚以上 『電車でGO!!』開発チームがこだわった細かすぎる再現性とは

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