Q 企業は大きくなると初心を忘れて、欲に走ってしまうものなのでしょうか。

 高すぎる携帯料金にもついに官邸のメスが入りましたが、そもそもどうして今まで安くならなかったのでしょうか。僕は今のIT業界は変わってしまったと思っています。ソフトバンクやGoogleやAppleなど、かつてはイノベーターだった会社が、今は既得権益を増やすだけの強者に成り下がっています。企業は大きくなると初心を忘れて、欲に走ってしまうものなのでしょうか。

(会社員・男性・23歳)

A そもそも企業というのは、社員を食わすために、株主を儲けさすために、安定した稼ぐ仕組みを作ることを目指している。

 それでいうと、企業は大きくても小さくても、初めから欲に走っているものなのよ(笑)。

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 今回はお上に怒られて、携帯キャリアも一斉に値下げになったけど、本当はそのままの方が会社にとっては有り難かっただろうね。

 かつてはソフトバンクも「日本の携帯料金を安くする!」を掲げ、docomoやauに対抗する価格破壊を打ち出していたんだけど、3分の1のユーザーを取ったら競争をやめちゃった。たぶん、楽天も4分の1の市場を取ったら無理な値下げはしなくなると思うよ。

 GAFAも「テクノロジーでより良い社会を作ります!」と言いながら成長してきたけど、たぶん株主の前では「テクノロジーでより良い既得権を作ります!」と言って、投資を集めてたんじゃないかな。

 

葛藤しながらも今の思いを忘れずに

 身もふたもないことを言ってるようだけど、企業が市場を取ったあとに、投資の回収モードになるのはビジネスとして普通のことだからね。

 そもそも企業というのは、社員を食わすために、株主を儲けさすために、安定した稼ぐ仕組みを作ることを目指している。つまり、それは長く続く既得権を作りたいということ。そしてそれは、ITに限らずどんな業界でも同じように行われていることなんだ。

 どんな会社も会社の未来のために投資をしている。見返りを求めて研究費や開発費や設備費を支払っている。そんな個々の欲望をエネルギーにして、成長してきたのが資本主義だし、その仕組みをうまく利用して、大きなイノベーションが生まれてきたんだと思うよ。

 

 たぶんこれから君も、仕事を通していろいろな欲望に向き合うことになるだろう。もし、そこに疑問を感じるなら、君なりの新しい仕組みを考えてほしいな。

 葛藤しながらも今の思いを忘れずに、新たなイノベーターになるのを期待しているよ。