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コーチにカメラとピンマイクをつける

 そこから出てきたのが、いま一度自分たちの指導を振り返ろうというアイデアでした。

 総勢120人のコーチたち、一人ひとりのコーチングをつぶさに撮影しました。選手たちへの声かけや、どのタイミングでどこを見ているのか、何に注目して指導しているのかがわかるよう記録しました。

 ピッチの外からコーチの姿や声をカメラでとらえるだけではありません。撮影される側のコーチには胸にアクションカメラとピンマイクをつけてもらいます。そのコーチに指導された選手たちが、その指導をどう受け止めているかを探るためです。

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©iStock.com

 そのコーチの指導を前向きに受け止めているのか、それとも萎縮しているのか、もしくはまったく理解できないのか。そういったことが、コーチの胸につけたアクションカメラに映る選手の表情や動きに鮮やかに浮かび上がるのです。

 そうやって撮影したビデオを見て、私たちコーチは互いに指摘し合います。

「あんなにシリアスに言ってしまうと、選手は怖がっちゃうよ」などと指導者のアティチュード(態度)に言及するものもあれば、「あそこは選手に自分で考えさせたほうがよかった」というものも。もちろん良い指導を認め、「あの声がけは良かったね」と褒めたりもしました。

 それまでは、ビデオに撮るのはチーム全体のプレーであり、ビデオを見ながら「全然走ってないね」などと評価の対象になるのは選手でした。ところが、このプロジェクトでは、評価の目が自分たちコーチに向けられます。

「なぜ、あそこであの声がけしたの?」と突っ込まれたり、突っ込んだり。コーチ歴の長いベテランも、新人もそこでは対等でした。

 私自身、当時ですでに指導歴は20年を経過していました。ベテランコーチと呼ばれる状況です。自分が指導する姿を見ること、仲間に見られること、本当に恥ずかしくてたまりませんでした。コーチ全員が同じ思いだったはずです。