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連載テレビ健康診断

「いい人だけど間が悪い」「パワハラに耐えかねて爆発」…『麒麟がくる』の光秀をもう一度考える――青木るえか「テレビ健康診断」

『麒麟がくる』(NHK)

2021/02/14

 非業の死を遂げる歴史上の人物が主人公になることが大河ドラマには多い。井伊直弼、源義経、坂本竜馬に真田幸村に大村益次郎に西郷隆盛と続々。死んで終わるのはドラマチックで泣ける。死は感動を呼ぶ。

 では明智光秀は非業の死の人としてドラマチックなヒーローたりえるか。三日天下とか、落ち武者狩りの農民に殺されたとか、悲劇よりも間抜け寄りの人として認識されている。感動の主人公になりづらい。そこに敢然と挑戦した『麒麟がくる』、この光秀のイメージをどうやってひっくり返すか、の一年であった。

明智光秀によって築かれた福知山城 ©iStock.com

 で、ひっくり返ったのでしょうか。

 織田信長がとんでもない人だということはよーくわかった。マンガに出てくる「魅力的なサイコパス」みたい。ドラマの登場人物としてそういうキャラはよく出てくるが、たいがいうすっぺらいただのワガママ者みたいになるが、この信長様はマンガのように魅力的である(最初は、なんだこの丸顔の信長、大丈夫か、と思ったが)。そこにもってきて、光秀は「そんなこと言ったら信長怒らすに決まっとるやろ!」と叫びたくなるような対応を確実に繰り出す。メチャクチャな上司を諫めようとして申し上げたことでますます上司はメチャクチャ怒り、その怒りに押されて判断まちがう、言うべきことを口ごもり、黙っとくべきことは口に出すし、行動のタイミングも悪い。よかれと思ってやったことは信長を怒らせるわ、咄嗟の判断は裏目に出るわ。自分が間の悪い人間なので胸が痛い。

 だからある種リアリティあるんだけど、一方に魅力的サイコパスがいるのに、そんなリアリティは主人公を小さく見せるのでは……。

「明智光秀は、頭もいいし信念を持ち義のあるサムライ、でも間が悪い」と感じるわけです。「間が悪い」で台無し。

 そんな光秀がついに立つ。本能寺で信長を殺す! 家康の饗応役で信長にさんざんインネンつけられてついに爆発。光秀、目がいっちゃってる。耐えに耐えたものを爆発させたわけだけど、それより唐突感すごい。長谷川博己熱演しすぎ。大丈夫か。大丈夫じゃない。これがトリガーとなって三日天下で死ぬんだから。

明智光秀を演じた長谷川博己 ©文藝春秋

 明智光秀を主人公としてどう表現したかったのか、ここまできてもよくわからない……。いい人だけど間が悪いサムライが、パワハラに耐えかねて爆発。うーむやはり従来の見方を覆すものではない。

 饗応役で思い出すのが浅野内匠頭、あの人もいきなり爆発して大変なことになっていた。四十七士の仇討ちがあったからいいが、そういえば浅野内匠頭主人公の、死ぬとこで終わるドラマもないよな……ということに今さら気がついた。

INFORMATION

『麒麟がくる』
NHK 日 20:00~
https://www.nhk.or.jp/kirin/

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