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一枚の絵の中に東西の文化を融合
アーティゾン美術館の3フロアにわたる広大な展示スペースを、コレクション作品が埋め尽くすさまは壮観のひとこと。ひと巡りすれば国内外を問わず、20世紀以降の世界の美術の流れを、大枠で理解できてしまうところが秀逸だ。
最初の展示室でいきなり、凛とした佇まいで誰の目も惹く作品と出くわす。藤島武二の《東洋振り》。
藤島の画業の中期に、人物を真横から捉えた横顔シリーズがある。その中の代表作と目されるのがこの《東洋振り》。構図は、ルネサンス期に多く描かれた肖像画の流儀を援用している。
つまりこの絵画は、西洋からもたらされた油彩画の技法で、ルネサンス絵画の構図にのっとり、中国服を着た日本人女性を、東京のアトリエで描いたものということになる。東西さまざまな歴史と文化を、一枚の絵の中に融合させようというねらいが、描き手の頭の中にはきっとあったことだろう。
「目が歓ぶ」感覚
20世紀初頭にピカソとブラックが始めた「キュビズム」は、遠近法を軸にした伝統的な表現法から自由になって、ものの形態を二次元画面の中に捉え直そうとした表現上の革新だった。この生成と発展を、実作によって追える展示室もある。
ピカソやブラックが大胆に解体した画面に、秩序も加えようと努めた作品がある。ジャン・メッツァンジェによる《円卓の上の静物》。
描かれている光景は、まったく現実のままではないのだけれど、たしかにランプ、パイプ、マッチ箱などが円卓の上に置かれている様子だということはわかる。現実とのつながりを保ちながら、キュビズムの手法を用いて画面が再構成されているのだ。
具体と抽象の按配が絶妙で、眺めているといかにも「目が歓ぶ」感覚が味わえる。