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「直接目を見てお父さんと話をしたいですね」

――お父さんは、Aさんの介護を実際に見て頂きたいと仰っていました。

「それを見て、本当に相手方にプラスになるんだったらやらないといけないことだと思います。お父さんが本当にそれを望んでいるのであれば。でも本当にそれを思っているのかなっていう気持ちは正直あるので、文春さんを通してじゃなくて直接目を見てお父さんと話をしたいですね」

――最後に、いま辻さんが考えていることを教えてください。

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「僕は10年前に起きた事故を1日も忘れたことはないですし、法的には解決してますけど、人として解決してるのかって言われると僕はそうは思ってません。だから今後、何らかの形で絶対に償っていかなければならない。一生、死ぬまで僕が息を引き取るまでそれは忘れたらあかんし、行動に移さないといけない。それがどのタイミングになるかは分からないですけど、自分のタイミングでそれはしないといけないなっていうのはわかってます。

 それは嘘なしの本当の思いです。人を傷つけてしまった過去があるからこそ人に寄付 したりもできたと思いますし、こうやって人のことを考えられるようになったと思うんで。

 ただ『いつ何をやる』って言うのは言えないし、それでは僕のことを判断できないんなら、被害者家族の中で一番冷静に話せるお父さんと2人で話をしたいというのが僕の願いです」

Aさんに寄せられた友人たちからのメッセージボード ©文藝春秋

 交通事故被害者とその家族、加害者のあいだには、刑事処罰や損害賠償だけでは解決できない、法律では行き届かない感情的な溝が生まれる。以前であれば裁判が終わり、生活圏が違えば互いの存在を目にして心をかき乱される機会はそれほど多くなかった。

 しかし近年はSNSの普及によって、被害者と加害者が互いの視界に入り込む事態も頻繁に起きるようになっている。この事態が、Aさん一家のように、交通事故で傷を負った人やその家族が憎しみを手放すことを難しくしているケースは、確実に存在する。

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