どこまでも広がる大地、まっすぐに続く道路、この開放的な景色と爽やかな空気は、何度訪れても感動する。
留萌まで来ると国道232号線、オロロンラインに入る。オロロンラインは小樽から稚内まで日本海の海岸線に沿って走る国道である。壮大な水平線に沈む夕日や、海岸に連なる岬、延々と続く草原地帯など、絶景を眺望できるドライブコースとして有名だ。
ヒグマだらけの町
苫前町に入ると苫前町役場の前に大きなヒグマのオブジェが、訪れる者を歓迎していた。交通安全を訴える旗にもヒグマが描かれており、ヒグマがかなり身近な存在だと思わせる。
苫前町郷土資料館は、昭和3年に建てられた旧村役場を利用した、雰囲気のある建物だ。入り口ではここでも、ヒグマが案内してくれている。
館内に入ると今度は、巨大なヒグマの剥製が出迎えてくれた。館内の展示は、苫前のくらしにまつわるもの、ヒグマの習性と生活、そして三毛別羆事件に関する解説に大きく分けられている。展示の周りには、ヒグマや野生生物の剥製が並び、雰囲気を盛り上げていた。
特に注目したいのはやはり、三毛別羆事件のことだ。ここでは実際に襲撃が起こった現地の写真と地図を使って、時系列や距離感、ヒグマの足取りや位置関係など、どこでなにが起こったのかが、より鮮明に詳しく解説されていた。
大正4年12月9日、ここからおよそ20km山奥へ入った三毛別六線沢に、体長2.7mの巨大なヒグマが出現。冬眠をし損ね空腹だったヒグマは数度に渡り人家を襲い、7名が死亡、3名が重傷を負った。
その中のひとりは、ヒグマに襲われたまま連れ去られ、150m離れた林の中で片足の膝下と、頭の一部が見つかった。また別のひとりは、上半身から食われ始めると、臨月の腹を破られ胎児が引きずり出されたことなど、被害の状況とともに実際に起こった地獄絵図の様子も事細かに記録され、背筋が凍った。
館内に作られた人家の中では、窓から侵入するヒグマと、それに驚く人間の様子を再現。こうして剥製とマネキンを使って解説されていると、より立体的に恐ろしさが伝わってくる。