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3人に1人ががんで亡くなる日本 “元気に見える”終末期「残された時間」の見極め方と過ごし方

2021/04/17
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 患者が亡くなった時に備えて、兄弟や親戚が銀行預金や生命保険の手続きなどを進めるように患者の配偶者や子どもに声をかけることがあるが、それに反発して揉め事になることもある。こうした事務的な手続きは重要で、あとで落ち着いて考えれば感謝に値することなのだが、人によっては“薄情”に映ることがあるのだ。精神的に余裕がなくなるからのことなので、責めることはできない。

家族のフォローまで含んでの緩和ケア

 がんは老衰などに比べて終末期が比較的短いため、家族は最期まで頑張り通してしまうことが多い。結果として患者が亡くなり、葬儀など一連の行事も済んだところで、強烈な喪失感に襲われることになる。

「まず頭の中が真っ白になり、悲しみとつらさに襲われる。次に周囲の人間を責める時期が来る。それを過ぎると『あの時にああしてあげればよかった』と自分を責めるようになる。そうしたプロセスを経て本当に諦められるまでに、数年という時間がかかると言われています」

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「ケア」は患者だけのものではない ©iStock.com

 じつはがんの緩和ケアは、患者が亡くなったあとの家族のフォローまでを対象としている。在宅診療であれば担当していた訪問看護師が遺族に声をかけ、話を聞き、必要があれば医師の受診を勧める。病院や施設で亡くなった患者の家族には、遺族会への参加を呼び掛けることもある。

「遺族会には“先輩遺族”がいて、悩みや苦しみに耳を傾け、体験談を語ってくれる。そうして内に秘めていた苦しみを吐露することで次第に心が落ち着いていくのです。一種の集団療法のような役割があるので、つらい時には積極的に参加してほしい」

患者と家族の「がん医療」

 現代のがん医療は、病める患者だけでなく、患者をサポートする家族をも対象としたサービス提供体制を整備している――ということを知識として持っておくだけでも、精神的な負担は軽減される。

 そして、つらい時、困った時には、遠慮しないで医師や看護師、医療スタッフに相談してほしい。眠れない、食べられないなどの症状が出ている人には、それに応じた治療が必要になるし、治療によって状況は改善に向かうはず。

 一人で悩まなければならない理由はない。

 あなたの悩みを聞いてくれる人が、必ずいます。

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