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「生活を便利にする道具」としての車選び

 総じて軽自動車は、日本の道路環境や、国民の生活ニーズを的確に反映した車種である。車の「ステータス性」を抜きにして、家電のように「生活を便利にする道具」として捉えれば、これほど合理的な車はない。

 加えて、環境性能の高さもポイントである。燃費がいいだけではなく、車体が小さいため製造時のCO2排出量も抑えられる。車の環境性能を、製造時から廃車時までのスパンで総合的に評価する「ライフサイクルアセスメント」の観点が重要性を増すなかで、「必要最低限」を具体化した軽自動車の価値は見直されるべきだろう。

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 車体素材の約7割は鉄鋼であるが、鉄鋼1kgを製造するにあたり、およそ2kgのCO2が排出されるという。その他のアルミや樹脂といった素材はさらに排出量が大きくなる。車重が1tの車を製造するにあたって、少ない試算でも3t~4tのCO2が排出されるとされており、これは当然車重に比例して増えていく。

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「大きい車=ステータス」は時代遅れになっていく?

 この先EV化が進んでも、「車の重さ」が環境性能を左右することには変わりがない。重い車を動かすにはそれだけ多くのエネルギーが必要であり、バッテリーの容量も大きくせざるをえない。EV車はその大容量バッテリーを製造する際のCO2排出量が問題とされているが、軽い車であればバッテリーをやたらと大型化する必要もないだろう。 

 SDGsを掲げながら、メーカーが大型のSUVなどを広告塔にしている現状には、やはり歪なところがある。もちろんここには、「大きい車ほどステータスが高い」という消費者意識の反映もあるだろう。とはいえ近いうち、環境意識が高く、情報の拡散力に秀でたZ世代が社会に出てくるにつれ、「環境性能よりもステータス」という考え方は古くなっていくのではないか。

 もしかすると、通勤や買い物程度にしか使わないのに、ステータス性を重視して大きな車を買うことそのものが、そのうち「ダサい」行為と見なされるようになっても不思議ではないだろう。