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装備はむしろ「普通車より上」のケースも

 軽自動車はサイズ・排気量が規格化されており、ボディ形状や性能による差別化が難しいために、装備面での差別化が重要な鍵を握る。とくに競争の激しいスーパーハイト系の車種においては、メーカー各社が普通車も真っ青の充実装備を用意している。

 たとえばN-BOXにおいては、運転席と助手席のシートヒーターがほぼ全車標準装備となる。ところが、ハリアーやアルファードといった高額車種においても、シートヒーターはグレード別の設定であり、上級グレードでなければオプションで選択することすらできない。「プレミアム感」が売りの車種に、「軽自動車にある快適装備がついていない」という事態が生じているわけだ。

 日産の高級ミニバン・エルグランドと、同社の軽自動車・ルークスとの「装備の逆転現象」も興味深い。ルークスの「プロパイロット」付のグレードは、渋滞時にも対応するアダプティブクルーズコントロールや、車線中央を維持するレーンキープアシスト、停止時にブレーキから足を離せるオートブレーキホールドといった機能を備えるが、これらはエルグランドにはオプションですら用意されていない。激戦区で真っ向勝負を挑むルークスと、もはやアルファード一強となったLサイズミニバン市場で逆転を望めなくなったエルグランドとでは、メーカーの気合いの入れ方が違うのである。

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日本の道路環境にジャストフィット

 軽自動車の「取り回しのよさ」も、積極的に選ぶべき理由の一つである。とりわけ、年々普通車のボディが拡大していく昨今の動向を鑑みれば、狭い道でもストレスなく進める軽のメリットも際立つというものだ。

 今では多くの国産車種が海外展開を前提とした「グローバルモデル」となっており、日本の道路環境のみに照準を合わせることが難しくなった。長らく「5ナンバー」だった車種、たとえばカローラも、現行モデルは車幅1745mmである。SUVブームの影響もあり、かつてトヨタのフラッグシップであった「セルシオ」よりも幅の広い車が道に溢れかえっている。

 もちろん個人のレベルでは、「慣れれば大きくても問題ない」と言えるかもしれない。けれども、1車線道路で右折待ちの車のために後続車が通れず渋滞が起きる、といった状況は散見されるのであり、そうしたケースのうちには「車のサイズが小さければ起こらない」ものも多いだろう。

 道路が広がるわけでもなく、さらに高齢化に伴いドライバーの空間認知能力は衰えていく。こうしたなか、自動車のボディサイズだけが拡大されていく動向は、明らかにこの国の現状に即したものではない。