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 携帯電話では、90年代から00年代にかけてiモードなどドメスティックな技術で高機能の製品を生み出し、あるいはシャープのザウルスやソニーのクリエのような斬新なPDA(携帯情報端末)も存在し、さらにソニーのウォークマンは音楽受容のイノベーションを起こした。だが、Appleによる破壊的イノベーションによって、現在のスマートフォン市場では見る影もない。現在の世界シェアは、先頭のサムスンをシャオミやファーウェイなどの中国メーカーが追う展開だ。

K-POPにマーケットを奪われ続けている

 経営学者のクレイトン・クリステンセンは、1997年に上梓した『イノベーションのジレンマ』でこう記している。

 最高の顧客の意見に耳を傾け、収益性と成長率を高める新製品を見いだすことを慣行としている企業は、破壊的技術に投資するころには、すでに手遅れである場合がほとんどだ。――クレイトン・クリステンセン『イノベーションのジレンマ 増補改訂版』序章(玉田俊平太監修・伊豆原弓訳/翔泳社/Kindle版)

 ジャニーズをはじめとする日本のアイドルがいま直面しているのも、この困難さだ。囲い込んだ顧客に従来型の満足度の高いサービスを提供し続けた結果、新しい音楽と斬新なダンス、そしてラグジュアルなミュージックビデオを送り出してきたK-POPにマーケットを奪われ続けている。10年前、少女時代とKARAに夢中だった小学生は、BLACKPINKとTWICEに夢中な大学生になっている。それが2021年の現実だ。

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 90年代中期から10年代中期までの20年間、たしかにジャニーズは国内の芸能・音楽マーケットでは頭ひとつ抜け出たプレイヤーだった。しかしクリステンセンが指摘したように、既存ファン向けの優れた経営をしていたからこそK-POPのような機動的な策を採用できず、そのリーダーの座が揺らぎつつある。しかも公取委に「注意」されたように、それは競争相手(外敵)を強権的に排除しうる立場にいたからこそ生じてしまった慢心によるものだ。

【動画】ORβIT「UNIVERSE」Dance Performance Video

ジャニーズが抱える“最大の弱点”

 男性グループに話を戻せば、この状況における今後のポイントはふたつにまとめられる。

 ひとつは、コンテンツのグローバル対応だ。そこでは、ドメスティックな空間で通用してきた作法は通用しない。現状は、K-POPルーツのJO1やORβITは十分な対応を見せ、最近はジャニーズのSexy ZoneやSnow Manも意欲的な曲を発表するようになった。ジャニーズはゆっくりとだが自己変革の道を歩みつつある。

 ただ、それと同時に重要なのは、コンテンツの運用だ。いくら素晴らしい作品を創っても、それが行き届かなければ意味がない。必要とされるのは、徹底したプロモーションとそれを実行するためのオペレーションだ。CJ ENMと吉本興業によるJO1がその点に長けているのは間違いないが、ジャニーズの弱点はここだ。