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――ラストシーンのダンスは、その場でつくっていったものなんですか。

石田 はい、みんな砂連尾さんに誘われながら(笑)。最初、僕は監督としてちゃんと外から見ていた方がいいのかなと思ってもいたんですけど、段々と輪のなかに入っていくことになりました。完全に即興だったし、自分の迷う姿も含めて、もう撮ることができないラストシーンになったなと思います。

©2020 Tomoya Ishida

「バリアフリー上映」という形ではなく…

――この映画は、一般公開の段階から音声ガイドと字幕の両方をつけるという画期的な上映方法ですね。これはもとから考えていた形式なのでしょうか。

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石田 最終的に両方入った状態にしたい、ということは考えていました。目の見えない人に、この映画を見てもらいたかったので。ただ「バリアフリー上映」という形ではなく、「オープン上映」として通常の上映から音声ガイドを付ける、というのは、PFFや東京国際映画祭での上映を経験して考えていったことです。映画のなかで、美月さんや佐沢さんが、聴覚障害者や視覚障害者の方たちと映画や舞台との関係についていろいろ語ってくれましたけど、それを踏まえて、僕自身がどう考えるかについては、あの場で語りきれなかったなという思いがあって。自分なりの応答として、音声ガイドと字幕がある形を最終的な作品の形とするべきなんじゃないかと思い、この形で上映したいと配給の方たちや映画館にもお願いしました。

©2020 Tomoya Ishida

――オープン上映で見て最初は情報量の多さに戸惑ったんですが、一方で、こんなふうに映画を「見る」形もあるんだとハッとさせられました。普通は、健常者が見る形が「通常上映」としてあって、音声ガイドや字幕が付いた「バリアフリー上映」が付加としてあるわけですが、それが完全な上映形態なんだろうか。そんな疑問を投げかけられた気がしました。監督としては、この上映形式を採用することで問題提起をするような気持ちもあったんでしょうか。

石田 問題提起というと、ちょっと言葉が大きすぎる気もするんですけど……障害によるバリアみたいなものを一度取り払ってみたかったんです。でも、それ以上にオープン上映にすることで、聴覚・視覚障害の人たちがどう映画を見るかを一場面でも想像を促して、いろいろな発見が得られる映画体験の場が生まれたらなと思います。僕自身も、今回、音声ガイドを一緒につくってみて、いろんな発見がありました。この場面を説明するにはこのくらいの言葉があれば、イメージできるんだ、とか、こうやって表現するのか、とか。あまり構えることなく、「あ、そうか、言葉だとこうなるんだ」と感じてもらえたらいいですね。

いしだ・ともや 1997年、東京生まれ。2016年に立教大学に入学し、篠崎誠監督らのもとで映画制作を学ぶ。現在は同大学院修士課程在学中。初監督作品となる本作はPFFアワード2020グランプリを受賞した。

INFORMATION

映画『へんしんっ!』
6月19日(土)より、ポレポレ東中野、シネマ・チュプキ・タバタにて公開、他全国順次
https://henshin-film.jp/