昨年6月、学校が全児童を対象に「心と体のアンケート」を実施した。美咲さんの回答には、心のケアが必要と思われる重大な内容が含まれていたにも関わらず、学校は両親に伝えず、美咲さんに対して何のケアも行っていなかったことが判明したという。
口頭で謝罪した校長は、続けて「追記案」と印字された紙を出してきた。A4判1枚に5行書かれたものだが、「教師が子どもを苦しめたことは、いじめ、虐待であったと猛省しております。深く、深く、謝罪いたします」と書かれていた。しかしこの追記案は、現在まで正式な書面には反映されていない。
「自分の価値観を押し付けてしまった」緊急保護者説明会でN教諭は……
両親が学校に対応を求めはじめて4カ月過ぎた6月12日、M小学校の体育館で緊急保護者説明会が開かれた。コロナ禍のため各世帯から1人の出席に限られたが、対象307世帯のうち205世帯が出席した。
集まった保護者を前に、中央の演台に校長、向かって右側にN教諭と児童支援の教諭、その後方に15、6名の教員が2列で並んだ。
司会の副校長が「録音、撮影は控えて下さい」と言った後、校長が「4年生の子供が担任から心理的虐待を受けている調査を進めて参りました」と切り出した。
学校は4月に入り、旧4年生の児童と面談し、保護者に電話をかけて聞き取りを行ったところ、N教諭は「言葉が厳しい」「態度が怖い」「失敗に厳しい」「プリントが配布されないことがある」「何かあった時に連絡がない」「児童によって対応が違うことがある」等々が確認できたという。
そして「列の先頭の児童を飛ばしてプリントを配布すること」があり、後からも配布しなかったこと、児童にテストを受けさせなかったことがあったこと、給食の盛り付けでは「希望に沿わない配膳が行われたこと」等々があったと話し、「心から謝罪します。大変申し訳ございませんでした」と述べた。
ただし「現時点でも、ご指摘を受けながら不明な点が残っております。調査結果につきましては改めて説明する機会を設けさせて頂きます」と付け加えた。
次に問題のN教諭が立ち上がり、「大変申し訳ございませんでした」と頭を下げた。
これまでの行為の理由として「児童に対し、こうあるべきという自分の思い入れがあったような、自分の価値観を押し付け、自分の理想に向けて児童を誘導しようという気持ちがあり、そのため態度を厳しくしてしまったことがありました」と述べた。時間にして1分35秒だった。美咲さんの両親は右側の最前列に座っていた。目の前にいたN教諭は両親と目を合わせることもなかったという。