教諭を「いじめや虐待では問えない」という理屈
美咲さんの父親はこう話す。
「私たちが指摘したN教諭の行為について『確認した』と一定程度認めましたが、行為が行われた理由として『配慮が足りなかった』『説明が不足していた』ことを挙げるなど、あたかも悪気はなかったかのような回答でした。N教諭の行為はそんなレベルではなく、『いじめ』『虐待』です。しかしそれは認めず単に『不適切な指導だった』としたのです」
4月14日、両親は学校の回答書に対して反論書を出すと共に、市立学校の教諭に対する人事・懲戒権を持つ横浜市教育委員会に書面を出し、事実関係の調査とN教諭の処分を求めた。
「4月25日に横浜市教育委員会の指導主事と面談した時、教育委員会が『学校に入ります』と言われました。これで対応してくれると期待しました」(父親)
しかし2週間後の5月11日、教育委員会の指導主事と面談すると、「先生が行った行為は『いじめ』『虐待』とは言わない。法律上もそうなっている」と言われただけだった。
「いじめ防止対策推進法」では加害者を「児童等」に限定しており、「児童虐待防止法」では加害者を「保護者」に限定している。法律上、教諭をいじめや虐待では問えないという理屈を繰り返すだけだったのだ。
この間、両親は学校に派遣されてくるスクールカウンセラー、児童相談所、そして警察まであらゆる所に相談したが、話を聞いてくれないか「教育委員会へ話して下さい」と言われるだけだった。
「教師による児童へのいじめについては、相談できる外部の機関がないことも分かり、呆然としました」(父親)
対応が一転、「配布物を渡さなかったことを確認」
5月31日、両親の反論書に対して校長が2回目の回答書を出した。
配布物について、N教諭が美咲さんを含めて「数名の児童に対して配布物を渡さなかったことがあったことを確認しました」として、配布物を渡さなかったことに対するN教諭の弁明が二転三転したことも認めた。
給食については、N教諭は「美咲さんにのみ少なく盛っていたという認識はなかったと述べています」とした一方で、「美咲さんの他にも給食の量に差を付けられていたと感じていた児童がいたことも確認しました」と書かれた。
また、N教諭は「特定の児童を対象として、特に厳しい指導を行ったという認識はなかったと述べています」とした一方で、美咲さんと同じクラスだった児童から、N教諭が「特定の児童に対して特に厳しい指導を行っていたという発言がありました」と書かれた。
こうして両親の指摘を新たに事実として認める一方で、「いじめ」「虐待」である旨は認めなかった。
2回目の回答書が出された後、学校側は一時、N教諭の行為について「いじめ」「虐待」であったことを認める方針に変えている。
回答書をもらった時、両親は「重大なことが判明した」と言われて6月3日に学校側と面談することになっていた。