文春オンライン

暴走族の集会に単身突撃…「怪談話するんやけど聞かへん?」から始まった“極貧青年”の住職人生

「怪談和尚」蓮久寺・三木大雲住職インタビュー#1

2021/08/13
note

「お坊さんが怪談話をするんやけど聞かへん?」暴走族に単身突撃

――怪談説法を始めたきっかけはなんでしょうか?

三木 なにせ私には(当時)お寺がなかったので、大きなお寺さんにつとめていたことはあったんですけど、いわゆる人の相談に乗ったりとか、お経を誰かに教えるというような活動を一切していなかったんですよ。本当に掃除ぐらいしかなかったので、何かしたいなぁと思って。

 他にもいろんなお寺さんでは若い人が集まらないとか、案内を出しても檀家さんが来てくれないということをよく聞いていたので、それならお坊さんから出向いていけば良いじゃないかと。

ADVERTISEMENT

三木大雲住職 ©文藝春秋/撮影・宮崎慎之輔

 それで仕事が終わってからウロウロといろんな公園を見回っていたら、とある公園に集いがあって。そこにいた人たちがみんな仏教徒の集いかなと思うくらい背中に「天上天下唯我独尊」って書いてあるんですよ。それも刺繍で。「天上天下唯我独尊」というのは、お釈迦様がお生まれになって一番最初に発した言葉なので、ちょっと仏教の話聞いてくれへんかなと思って行ったら、「うるさい」と言われて(笑)。

 なんとかして彼らに話を聞いてもらえないかなと考えた結果、「お坊さんが怪談話をするんやけど聞かへん?」と言ったら、その仏教徒の集い……まぁ、いわゆる暴走族ですね。その人たちが「え! お坊さんがしてくれるんなら聞く聞く!」と言って、たくさん友達を連れてきてくれて。そこで私が怪談をするようになったのが、後の怪談説法になっていくって感じですね。

――そこが原点だったのですね。それは何年前のことだったのでしょうか?

三木 23歳からその活動を始めたので……今が49歳なので、随分前です。

――話を聞いた若者たちはどんな反応でしたか?

三木 みんな怖がっていました。怖いがゆえに、悪いことをやめようという。「バチが当たるよ、祟りがあるよ」というようなことを言って、(若者たちは)「あ、そうか僕が今苦しんでいるのは過去にこんな悪いことをしたからかもしれん」みたいな。

 他にも「言葉を綺麗に使いなさい」ということも言いました。「そうしないと怨霊が来るかもしれん」というような。まぁ、脅しというとおかしいですけど、そういった方向で彼らを導いた感じですかね。

――怪談だったからこそ、若者たちは話を聞いてくれたのかもしれませんね。

三木 そうですね。一度、「怪談を抜いてお説法だけを聞いてくれへんか」と、他の団体にアタックしたんですけど、全員聞いてくれなくて(笑)。やっぱり怪談説法をすると聞いてくれるという。それがもう今のライフワークになっています。

三木大雲住職 ©文藝春秋/撮影・宮崎慎之輔

#2へ続く)

怪談和尚 (文春e-book)

三木 大雲・原作 ,森野 達弥・作画

文藝春秋

2021年8月5日 発売

 YouTubeの「文春オンライン」公式チャンネルでは、三木大雲和尚による怪談説法を配信しています!

暴走族の集会に単身突撃…「怪談話するんやけど聞かへん?」から始まった“極貧青年”の住職人生

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー