いきなり1000円に値上がりする可能性は…
竹山 今後、いきなり1000円とかに値上がりする可能性はないんですか。
森信 ないでしょうね。あまり高くすると禁煙を決断する人が増えすぎて売り上げが落ちるので、“税をとる側”からすれば何のための増税か、ということになってしまいます。そういう意味ではいずれまた値上げがあるとすれば、竹山さんがやめる決断をしないギリギリの金額を狙って、あと10円だったら大丈夫かな、20円なら許されるかな、という感じで静かに上げていくと思います。
現場で担当した経験でいえば、販売本数が減っていく中で税収が最大になるように考えつつ、一方では負担になりすぎないように、均衡点を常に見直しながら国や地方の財政状況を勘案して改定を検討しています。言葉にするのは簡単ですが、国会議員さんの中には「もっとあげろ」「いや、もう絶対これ以上あげるな」と迫ってくる人がどちらの立場の人にもいますから、結構、胃が痛い思いをする仕事です。
竹山 たばこ以外にも、調整しながら上げている税金ってあるんですか。
森信 私が担当したことのあるものでいえば、酒税がそうです。ビールの税金が高いからと発泡酒や第三のビールが出てきて、どんどん味はビールとあまり変わらなくなっていくのに、税金の違いでそれらは値段が安いという状態が生まれました。
当然、値段の安いほうが売れますが、税金には“中立性”という原則があって、税金の多寡によって人の選好に影響を与えてはいけない、同じものには同じ税金をかける、というGATT(関税及び貿易に関する一般協定)の国際原則もあります。同じようなものが税金によって高かったり安かったりするのは経済に不測の影響を与えるので避けるべきだ、という原則です。
この原則によって、発泡酒や第三のビールの税金を高くして、ビールの税金は逆に安くする形で、数年先には同じ税率になります。
竹山 じゃあ、新しく出てきた電子たばこや加熱式たばこの税金も、同様の扱いになるんでしょうか。
森信 なにぶん新しいものは勝手がわからないので手探りの部分はあるでしょうが、全体としてはそうなるでしょう。
たばこ税の課税標準は、製造たばこの本数ですが、加熱式たばこの場合は、重量1グラムを紙巻たばこ1本に換算して税負担を決めていました。この結果、紙巻たばこと税負担割合を比べると、加熱式タバコが相当安くなるので、開発努力を行った企業や消費者への影響に配慮しながら、5回に分けて段階的に負担を増やして両方の差を縮めていきます。発泡酒の話に似ていますね。
来年10月に、最後の増税をして調整する予定になっています。