【2】トラックのタイムより「駅伝力」が勝負を決める
ロードレースが軒並み中止となった今年、各大学の戦力予想で参考にされたのは、5000mや1万mのトラックレースでの平均タイムでした
例えば、優勝候補だった駒澤大学は5000m13分台の選手がなんと17人!
数年前までは13分台の選手なんて、大学に2~3人いれば良いほうだったのに、今や13分台を出す高校生も数多く生まれるような時代になっているのです。なぜ、ここまで速くなったのか。
以前からナイキの厚底シューズ「ヴェイパーフライ」が箱根駅伝を席巻していることはたびたび取り上げてきましたが、実は今、同じ現象がトラックレースでも起こっているのです。現在、ほとんどのトップ選手はナイキの「ドラゴンフライ」もしくは「エアズームビクトリー」というスーパースパイクを履いていて、これをうまく履きこなせれば終盤の落ち込みもなく、本当にいいタイムが出る。どの大学も「大学史上最強の戦力」となっていますが、世界的にもタイムが一気に上がってきているのです。ですので、今シーズンに関してはトラックの平均タイムでの戦力分析はあくまでも目安と考えたほうがよさそうです。
これはあくまでトラックの成績で、駅伝となると話は別です。
トラックのタイムの大半は、選手たちが競り合いながら出したものではなく、「記録会」で出したもの。記録会ではターゲットタイムを設定して、同じ目標タイムを狙う選手たちが流れにのって集団で走ることでタイムを出していきます。大会によってはペースメーカーがいますし、トラック脇にコーチや監督が立っていて「もう少し抑えろ」とか「最後に上げろ」とか的確な指示を出してくれる。つまり、「作られた」タイムでもあるのです。
ところが駅伝は区間によって距離も違うし、何番目にたすきをもらうか、単独で走るのか、集団で競り合うのか、状況や環境によって全く違ってくる。トラックのタイムが速くても崩れる選手もいれば、平凡なタイムでも強い選手もいます。
つまり勝利の決め手はトラックのタイムよりも、監督・選手それぞれの「駅伝力」が重要なのです。
トラックのタイムはTOEICの点数みたいなものだと思ってください。テスト対策をして、TOEICで高い点数をとっていても、人見知りだったりして、英語を実践で使えなければ意味がありませんよね。
駅伝も同じです。トラックでの実力はあるかもしれないけれど、それはあくまでも参考にしかならず、駅伝では実践力が求められるのです。
持ちタイム通りにはいかず、大番狂わせも起こる。だから駅伝は面白いのだと改めて気づいたのが今年の出雲駅伝でした。今季は監督・選手それぞれの個性と駅伝力に重きを置いて見てみてください。もっと駅伝が面白くなりますよ。