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「オイオイ大丈夫かよ…」過熱化する“事故物件”投資ブーム、不動産オーナーが語る“ヤバすぎる”現状

賃貸物件を探す人も無関係ではいられない――

2021/11/21

genre : ライフ, 社会, 経済

note

実際にどんな事故物件が売れているのか?

 実際にどんな事故物件が売れているのかというご説明のため、実際に私が内見した事故物件のエピソードをお話ししましょう。

 立地は東京近郊の某県で、駅からは徒歩20分。その駅から都内までは30分。高台にある閑静な住宅街に建っており、物件自体も平成築で新耐震基準です。接道もしっかりしており、再建築可能。駐車場もついているというナイスなスペック!

実際に内見した事故物件(100平米超)の間取り図 ※特定できないよう変更を加えています 作成=編集部

 気になるお値段は1100万円で、期待利回りはそれほどではないのですが、不動産屋さんによると、周辺の取引事例と比べたら少しお安いそうです。

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 投資用不動産をいじっている人には「そのスペックならメチャメチャ安いんやないか?」と思われそうですが、残念なことに平地ではなく崖地です。へばりつくように無理やり建てられた家で、躯体自体もかなり傷んでいます。心理的瑕疵と解体費、擁壁のやりなおし費用なんかも込みのお値段といったところなのでしょう。

 崖にへばりついていると書きましたが、具体的には「崖に鉄骨造の土台をまず架けて、その上に家を建てている」という状態です。駐車場部分は擁壁部分をくり抜いて、コンクリートで固めた洞穴のような形になっています。不安定な家だな、というのが第一印象でした。

鬼門の方向に沈んだ家

 前の所有者さんが邸内で自殺されたという家なので、中に入る前に「お邪魔させていただきます」と合掌します。

 ガチャリ。

 玄関を開けてもニオイはありませんが、湿気の強さが気になります。高台の崖にへばりついている家なので、風通しは良いと思ったのですが、窓を開けても風がぜんぜん家に入ってきません。壁のクロスに張り付いたホコリもどことなく粘度があり、廊下も、リビングも、階段も、どこもかもが湿気に侵されているような感じです。

 また困ったことに、数分間その場にいるだけで、なんとも言えない違和感に襲われるのです。立っているだけで不安になるような、ふらつくような感じ。よくよく見ると家自体が鬼門の方向にけっこう沈みこんでいます。

 一度表に出て、家が乗っかっている架台を見てみると、北東部分の鉄骨がひしゃげていました。このせいで家自体が傾いているんですね。

 この時点で「これはきつい。帰りたい。ちょっと修繕費もきついし500万くらいなら買うかも。まあでもとにかく帰りたい」という気分だったのですが、仲間の投資家さんも同行していたので“現場”である3階も見ることにします。

 3階ならいくらか湿気はマシだろう……と思ったのですが、不思議なことにこちらのほうが湿気がひどくて驚きました。