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 ふすま、壁、収納部分の化粧板、すべてが湿気にやられています。それどころか、渦巻のような、龍のような、人面のような模様が出来ていました。布団やクッションの上にドリンクをこぼしたら、乾いたあと気持ち悪い模様が残ることがあるじゃないですか。それがあちこちにあって、人の顔みたいに見えるのです。

 個人的にはもうこれでアウト。気持ちが完全に萎えてしまい、写真も撮らずに外に出て、亡くなられた所有者さんに「お騒がせいたしました」と合掌してお詫びをしました。

告知義務ガイドラインの策定で再生事故物件が“熱い投資商品”に!?

 安いことは安い物件だったのですが、躯体が架台から沈んでいるので、長く使うつもりならそれなりの修繕費が必要になります。もしくは全てを撤去して新築するかですが、そこまでするような土地でもありません。

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 事故物件は仕入れの競争がやや易しいのですが、そこから先は普通の不動産投資と同じです。むしろ、客付けのことを考えると、トータルの難易度はさらに困難だといえるでしょう。

 個人的にはよっぽどの物件でなければおすすめしたくない投資なのですが、実は、これから事故物件の客付けが少し容易になります。

 国交省によって、事故物件の流通を促進するようなガイドラインが策定されたのです。

 令和3年10月8日に発表された「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」がそれで、いま不動産界隈で話題になっています。要点を挙げると、

 ★取引の対象不動産で発生した自然死・日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)については、原則として告げなくてもよい。

 

 ★賃貸借取引の対象不動産・日常生活において通常使用する必要がある集合住宅の共用部分で発生した自然死・日常生活の中での不慮の死以外の死が発生し、事案発生から概ね3年が経過した後は、原則として告げなくてもよい。

 というもので、つまるところ「自然死や不慮の死であれば客に告げなくても良い」「それ以外でもおおむね3年経過すれば告げなくても良い」ということになります。告知事項が大幅に縮小され、不動産屋さんが扱いやすいよう定義も明確になる感じですね。

※孤独死で特殊清掃が入った場合などはまた扱いが違うので、興味のある方はガイドラインを読んでみてください。

 詳しく読むと「事故があったか一応は調べること」「お客さんに聞かれたら答えること」「大事件の現場とかならちゃんと教えること」というフォローアップの項目もあるにはあるのですが、大まかな方向性としては「事故物件とかあんま気にすんなよ」なのは疑いありません。これからは「知らない間に事故物件に住んでいた」「普通の家賃なのに事故物件だった」ということが多くなるかもしれませんね。

 住む側としてはちょっと不気味なガイドラインですが、物件を貸す側や、不動産屋さんからするとありがたい策定なのだろうと思います。

事故物件への敬意を忘れてはいけない

 背景には増え続ける空き家や、高齢者が住宅を借りにくくなっているという問題があるので、このガイドラインの功罪を簡単に論ずることはできませんが、個人的には事故物件なら事故物件として、亡くなられた方に手を合わせて、納得して住みたいものです。

 余談ですが、仲良しの神職さんによると「空襲や地震があったので、そもそも東京全体が事故物件のようなものです。事件性のない物件であれば、あまり気にしないで良いです」とのことでした。私もそれくらいの気持ちで借りて、住んで、買っていこうと思います!

 また、これを読んで事故物件投資をやってみたくなった方がいるかもしれませんが、私は責任を持てませんよ……。あとマジで除霊とか依頼してこないでくださいね……。