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「回復の見込みのない患者は後回しに…」“優等生”だった韓国で、なぜ医療崩壊が起きたのか《韓国では日本に注目も》

2021/12/24
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「ウィズコロナ」政策を推し進め、感染者が急増

 11月1日からは、段階的に日常を取り戻す「ウィズコロナ」政策を推し進めた。飲食店などはQRコードなどを使った来店者の名簿作成が課せられたが、カフェなどの飲食店やカラオケも以前と同じように24時間営業が許可された。集まりもワクチン未接種者のみ最大4人までと制限されたが、接種者は制限なしにするなど規制を大幅に緩和した。

 飲食店からは年末の稼ぎ時を前に「ようやく一息つける」という声が漏れていたが、これをきっかけに感染者が急増。ただ、当初は「ウイズコロナ」により人の流れが増えて感染者数も一時的には増えるだろうと予想され、しばらくすれば落ち着きを取り戻すと言われていたが、状況はみるみる暗転。

 12月18日からは規制レベルを再び引き上げ、ワクチンパスを持たない人はカフェなどでの飲食は禁止となり、パス保有者の集まりも最大4人までに制限。飲食店の営業時間も原則夜9時までに短縮された。 

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 一体なぜこれほどまでに感染者が急増してしまったのか。鄭錡碩・翰林大学聖心病院呼吸器内科教授(前疾病管理本部本部長)は「『ウィズコロナ』開始の時期を見誤った」と指摘する。 

「状況が悪い方向に向かっていたにもかかわらず、政府は、『ウィズコロナ』を行ってしまった。

『ウィズコロナ』の根拠となったのは、韓国全体での2次接種率が70%に達することでした。医学的に計算すると約56%の人々が抗体を確保したとされるからで、韓国では10月22日にこの数字に達しました。しかし、この少し前の10月中旬から重症患者数と死亡率がすでに上がり始めていた。

 専門家はみな規制を緩和させるのは早いと警鐘を鳴らしましたが、政府は、『ウィズコロナ』宣言をアドバルーンのようにあげて、しかも、段階的な規制緩和ではなく、最高レベルから最低レベルに大幅に緩和してしまった。人々にもうコロナは大丈夫という誤ったメッセージを出してしまったのです」 

ワクチン接種を受ける文在寅大統領 ©getty

そして、「ワクチン供給の後れ」も挙げた。 

「韓国では今年2月初めからワクチン接種を開始したにもかかわらず、途中でワクチン不足となり接種ができたりできなかったりを繰り返しました。医学的に1次と2次接種の間隔を空けてもその効果に大きな差が出るわけではないといわれていますが、それでも規定どおりに行うことが望ましい。

 問題は政府が1次接種者を増やすことを優先してしまったことです。ファイザーなら3週間、モデルナなら4週間という2次接種までの間隔を引き延ばして、引き延ばした分のワクチンを1次接種に回してしまった。 数字を引き上げようと、専門家ではない政府が勝手に接種スケジュールを組んでしまったことは、政府の信頼を失うことにもなったのではないでしょうか」 

 筆者は1次・2次ともファイザーを接種した。その間隔は当初4週間とされていたのが、ワクチン不足から引き延ばされて、自動的に6週間後の接種にかわり、在韓日本人の知り合いと「効果は大丈夫なのか」という会話を交していた。