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人民に運動を強要するシステム

「世界最古の官僚国家」である中国の面目躍如とも言えるのが、やたらと細かい数値目標が導入されている点だ。「国民体質測定基準合格者の比率を92%以上に」「全人口の45%以上が日常的にスポーツを楽しむようにする」「国民1人当たりのスポーツ施設面積を2.5平米以上に」「住宅から徒歩15分以内に運動施設があるよう、全国をカバーする」「スポーツコーチ数を国民1000人あたり2.16人に」といった目標が定められた。

 今の金満中国にとってスポーツ施設の整備はさほど難しい話ではないが、人々に実際に運動させることは容易ではない。そこで活用が検討されているのが、中国お得意のデジタル技術である。

 現在、各地方政府に導入が呼びかけられているのが運動銀行だ。公園や公共スポーツ施設を訪問した際にスマートフォンを使って訪問履歴を記録するとポイントがもらえる。そのポイントをためると、映画チケットや商品券に交換できるという仕組みが一般的だ。

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五輪のマスコット ©CFOTO/共同通信イメージズ

 こうした手法は中国ではもうおなじみだ。中国共産党謹製のアプリ「学習強国」は、習近平の講話や党のメッセージを配信する、党員のための勉強アプリだ。日々習近平講話を勉強するとポイントがたまり、共産党グッズに交換したり、革命聖地旅行招待券をゲットしたりという特典もある。だが、実際にアプリの活用を広めているのはこうしたニンジン作戦ではなく、共産党支部間の競争だという。支部に所属する党員が学習強国でどれだけポイントを獲得したかがデータで集計されるため、ライバル支部に負けじと、日々の学習を強要されているという。運動銀行が普及したあかつきには、同様に地方自治体間の健康競争、運動競争が勃発しても不思議ではない。

習近平のサッカー熱に「右へならえ」

 体育強国建設の焦点の一つが学校である。中国ではもともと日本のような部活動はほとんどない。メダルを狙うステート・アマ以外は、受験勉強に専念という風潮だ。

 こちらも習近平体制になってから、大きく転換している。2015年公布の「中国サッカー改革発展総体ソリューション」には、授業にサッカーを取り入れたサッカー特色学校の建設拡大が盛り込まれた。