ネットでのトピックスの炎上騒動は、大概において「え、そこにモメる要素あったか?」というものが多いですね。最近では「交際するにあたり初デートに連れて行ったサイゼリヤで喜ぶ彼女」の是非について、Twitter上の一部の人たちが噛み付いたところからスタートするわけなんですよ。

 ほとんど大喜利の司会みたいな感じなんですよね。歌丸師匠が「何かと話題の、安くておいしい本格イタリアンを提供してくれるサイゼリヤ。そこに付き合い始めた女の子を連れて行く男子のツイートを見て、皆さん言いがかりをつけてください。はい、楽さん早かった」みたいな。

 当初、皆さんが騒いでいたのは「安い飯屋で喜ぶ女性をありがたがるクソ男子」的な煽り文句だったわけですが、さすがにネット社会は年代層の幅が広く、高い飯屋に女性を連れて行ってナンボという価値観の人から、いまの若い人はサイゼリヤでの食事も高級な非日常と指摘する人まで現れて、なんともカオスな状態となります。

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 果ては、「サイゼリヤで喜ぶ彼女」というイラストが掲示され、これに大量の方が釣られて激怒して大変なことになっておりました。

 もちろん、結果的にはサイゼリヤ大絶賛の声がネットに響き渡っておりまして、青森県民までもがサイゼリヤを救世主のように崇めている姿がありましたが、青森県にサイゼリヤはないだろ。

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イタリア人に聞いてみたところ…

 食通を名乗る人が「サイゼリヤは現地の高級なイタリアンレストランでの食事をしたことのない連中がもてはやしているだけで本格的イタリアンにはほど遠い」と酷評をした横で、元イタリア大使館員が「さんざんイタリアで高級料理を食べてきましたが、サイゼリヤほどイタリアの一般的な料理を高いレベルで実現できた店はない」と断言してツイ削除に追い込まれるなど、サイゼリヤをめぐる話題の小宇宙は素敵な輝きを帯びていました。

 大学に来ているイタリア人講師や留学生に「サイゼリヤってほんとのところどうなの?」と聞いてみたところ、皆さん全員好意的評価で、「あれは美味しい」とか「イタリアに帰りたくなると足が向くお店」など前向きな感じだったのが印象的です。逆にイタリアの食文化にあってサイゼリヤにないものは何かと聞くと、「店員とのおしゃべりができない」「コックが店内をうろうろしていない」などの比較的どうでもいいウィークポイントを言ってくるぐらいの話でしょうか。

 彼らの結論としては「イタリア人と日本人は味の感覚が近いし、シーフードに嫌悪感もないから、イタリア人にとっても日本食が美味しく感じるし、日本人向けのはずのサイゼリヤでもイタリア人は好き」ってことのようです。