連日報じられているロシア軍によるウクライナ侵攻。ロシア軍は25日、チェルノブイリ原発や首都キエフ近郊の空港を制圧。ロシアの部隊はさらにキエフ市内に侵入し、銃撃戦もおこなわれているという。

 戦地から避難する市民の動きはウクライナ全土に広がり、これまで女性や子どもを中心に11万6000人が隣国ポーランドなどの周辺諸外国へ避難したという。「文春オンライン」は26日、母国に残された家族の安否を祈る都内在住のウクライナ人女性に話を聞いた。

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 20年前に来日し、都内で暮らすガリーナさん(40代・仮名)は、現在、宿泊施設の経営にたずさわっており、今年4歳になる愛娘がいる。娘の父親は日本人だ。生涯のパートナーとして、今も仲睦まじく暮らしている。

©文藝春秋 撮影:細田忠 

 ガリーナさんの両親や妹、親族の多くは今でもキエフ在住だ。一方で、一部の親戚や友人は祖国の隣国であるロシアにもいるという。記者が「ウクライナがこのような状況になることは予想していましたか?」と問うと、ガリーナさんはこう答えた。

侵攻の直前まで現実味はなかった

「ロシアがクリミア併合を行った8年前から、ウクライナ東部では何度か小さな衝突はありました。その度に『ロシア軍がキエフまで来るかもしれない』といった噂はあったんです。ただ、あくまで噂にすぎず、それほど現実味を帯びたものではありませんでした。

ロシア軍の攻撃で黒煙を上げるウクライナの街 読者提供

 それもあって、ここ2、3ヶ月は私も家族も『またいつもと同じじゃないか』と楽観的に考えていました。それこそ侵攻がはじまった24日の朝でも『大丈夫だよ』『すぐにおわるよ』という気持ちがどこかにありました。とはいえ、妹の子どもは小学生なんですが、23日からは学校が休みになっていました。

 妹家族と母は、万が一のことを考えてエジプトに空路で避難したのですが、80歳になる高齢の父は愛犬が心配だったのと、何より故郷を離れるのを嫌がり避難を拒否し、24日の空爆の後、キエフから400キロ離れた親戚がいる田舎に避難することになりました。今後、より最悪な状況になれば、『ポーランドに避難する』と言っています」