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北海道に侵攻したロシア軍と自衛隊が凄惨な地上戦を…“元対戦車ヘリパイロット”が注目したロシアの“東方政策”

砂川文次さんインタビュー#1

2022/04/15

source : 文春文庫

genre : エンタメ, 読書

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 生まれは大阪ですが、地元は東京なんです。久留米(幹部候補生学校の所在地)に行った時から東京に帰りたいと思っていました。隊内では「任地の希望が通れば職種が通らない。職種が通れば任地が通らない」と言われていて、私は東京に帰りたかったんで、第一希望の任地を東部方面隊(関東甲信越・静岡県担当)、職種を航空科にしました。航空の適性が完全でなかったので、職種の希望に落ちて東部方面隊勤務になると思っていましたが、逆の結果になって北海道行きになりました(笑)。

――ハードル高い方が通ってしまったんですね。現在は地方公務員とのことですが、自衛隊をお辞めになられたのは何故ですか?

砂川 自衛隊の仕事は楽しかったんですけど、家庭との両立がうまくいかず(笑)。帯広にいたんですけど、妻は北海道に縁もない、親類もいない、友達もいないし、旦那がいない時は子供と二人っきり。辞める年の4月に三重の航空学校に入校が決まっていたんですが、半年経って戻ってきても、今度はどこに異動になるかわからない。そうしたら妻が実家に帰ろうかなとなって。先輩にもそういう人が多くて……。

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「家庭との両立がうまくいかず」自衛隊を辞めたと笑う砂川さん ©文藝春秋/杉山秀樹

『小隊』はこうして書かれた

――北海道に赴任されたとのことですが、『小隊』の舞台(釧路町)は土地勘がある場所だったんですか?

砂川 いや、ないですね。教育で4連(第4普通科連隊。帯広駐屯)にもいたんで、そっちで書いてもよかったかもしれませんが、知りすぎている場所もあれなんで、何回か通ったことがあるくらいの場所で書きました。

©文藝春秋/杉山秀樹

――『小隊』の主人公は普通科でしたよね。なぜご出身の航空科でなかったのでしょうか。

砂川 対戦車ヘリ隊は方面火力で、師団長や旅団長が「ここに対戦ヘリを持ってきてくれ」と言っても、基本的には方面総監マターで、現場が自由に使える戦闘力ではないんです。『小隊』のプロットだと一小隊長がしっくりくるし、幹部候補生学校でも職種が決まる前のBU(一般幹部候補生)は、最低限小隊長ができるように教育されます。中隊長になってしまうと、職種が前面に出てしまう。それは書けないんで、小隊長ならある程度俯瞰ができて、かつ現場から離れないところで書けると考えました。

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