——画面に映っているときに余裕がある。
福原 『スーパータイム』の露木茂さんもそうです。放送直前はもうガチャガチャなんですよ。ニュースの差し替えも入ったりして、電話を乱暴に切る社会部のデスクがいたりして。
でも露木さんは特に何か言うわけでもなく、時間になったらハンガーにかかっているスーツを着てスタジオに降りていって、「こんばんは」と……。アナウンサーはこれができなきゃいけないんだなと思いましたね。みんなワチャワチャしているからといって、画面の中では絶対にそれを出しちゃいけないわけです。
実際修羅場は…「よくあるんですよ」
——福原さんも生放送の番組を多く担当されてこられましたが、実際修羅場のような現場も……。
福原 よくあるんですよ。カメラの下にしゃがんでいるフロアディレクターが「次どうするの?」とか言ってて。自分はとにかくこの原稿の終わりまで読むことが決まっているのでそこまではちゃんと伝えて、最後の文を読み終わったところで「頭!」って指示が来る。それで、「最初にもお伝えしましたが」とまたやるんです。
——内心は焦っていても、それをおくびにも出さず。
福原 焦ってますよ。「大丈夫かな」とか思います。でも、それを画面上うまくやり抜けると、これがまた快感を覚えちゃうんです。こういう感覚は生放送をやっているアナウンサーには大なり小なりあるんじゃないでしょうか。
別に収録モノが楽だというわけではないんですが、生放送はやはりそれなりに。出演者の発言を全部拾って交通整理して、CMもどこまでに入れないといけないとか決まっているので。そこも考えて、あとは系列局が乗ってきたり降りたりするタイミングもあって……と。そういったことをぜんぶうまく捌く快感があるんです(笑)。
——生放送というと、福原さんが長年担当された競馬中継もそうですよね。つまりやはり結構なご苦労が見えないところであったということでしょうか。
福原 競馬中継も同じですね。関西テレビとか、系列各局で別の中継番組を放送していて、レースは同じ映像を使う。なので、たとえば15時40分にレースがはじまると37分にMCは喋り終えて、実況席に振るんです。
で、ここにCMが関わってきて、CMが明けてから実況席に渡すまで52秒しかありません、みたいなことを言われる。52秒で大レースに向けて盛り上げるようなコメントをしないといけない。かといって早口でまくし立ててもダメだし、誰にコメントを振ればいいかとか、そういうことを瞬間瞬間で考えてやっています。