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競馬中継の「絶対に間違えてはいけない情報」

——オッズや払い戻しなど、絶対放送しないといけない情報もありますし。

福原 払い戻しは絶対間違えてはいけない情報ですからね。あと、僕が担当するようになってから馬券の種類が増えたんですよ。三連単とかワイドとか。そうなると、予想の点数が増えるからその時間も余計にかかるようになるし、スタジオのリアクションも変わる。払戻金の案内も単勝複勝から全部話すわけではないですが、視聴者が画面を見てわかってもらうための間尺も必要。だからちょっと長めに見せておくようにしないと、とか。考えることが多いですね。

——競馬中継ではレースの結果によって左右される部分もあります。

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福原 台本はレースがはじまる前まではあるわけですけれど、レース後の台本ってないわけで。そこでレースの振り返りをするんですが、これがまたレース結果によって変わってくるじゃないですか。

 

 圧倒的一番人気の馬が負けたらその敗因も話さないといけないし、勝った馬の話ももちろん必要ですし。そこを臨機応変にその場その場でパッパッと。

忘れられないレースと「また来週」の面白さ

——出演者のみなさんもレース前に予想をしていますしね……。

福原 覚えているのは、ナリタブライアンが菊花賞前哨戦の京都新聞杯で負けたとき。あれは非常に印象的でした。ナリタブライアンを育てた牧場の場長さんがゲストに来られて、「ここは負けない。三冠目の菊花賞に向けてのステップです」と。

 でも、結果はスターマンという馬に負けた。もうスタジオ全員、レース前は「これで菊花賞がますます楽しみですね」みたいな展開をイメージしていたわけですが、それが負けたわけです。ゴールしたときに、場長さんがタラーっと汗を流したんですよね。負けるはずがないレースでしたから……。

 

——それはスタジオもお通夜状態になってしまいますね。とはいえ、予想が外れてシーンとなる中でも番組は最後までやらないといけない……。

福原 実はそれが面白いと思うんですよね(笑)。競馬場の周りの飲み屋さん、日曜日の夕方はあっという間に満席になって、ずっとああだこうだとみなさん話すじゃないですか。それでまた来週、って。そこも競馬の面白さのひとつだと思います。

その後、第55回菊花賞を制したナリタブライアン ©文藝春秋

入社3年目の大抜擢…「大御所の方の予想を聞いて大船に乗ったような気持ちになりそうなことも…」

——お話の限りでは、競馬中継はかなり“ギリギリ”の中でやられているような印象ですね。福原さんは若い頃からそんな現場で司会を務めて。

福原 入社3年目ですね。それまでは鈴木淑子さんと俳優の潮哲也さんが司会をされていて、3年目に私と鈴木淑子さんに変わりました。