——入社3年目とは、かなりの大抜擢ですよね。
福原 生意気にもスタッフの人たちに競馬についてああだこうだと言っていたことが実ったのかもしれません(笑)。
——その頃の競馬中継ですと、名物競馬解説者として知られた大川慶次郎さんとかもいらっしゃった時期ですね。
福原 大御所の方々なんて、ほんとうにお話を聞いていてもすごくおもしろいし、いかにも納得してしまうんです。でも、その予想通りにならないのが競馬ですから。大御所の方の予想を聞いて大船に乗ったような気持ちになりそうなこともあるんです。だけど、たとえて言えばその大船の進む方向がどこなのか。果たして港に着く船なのか、途中で迷ってしまうのか、元に戻ってしまうのか。
——それだけ馬券は難しい(笑)。
福原 ただ、楽しんでいるだけならそれでいいんですけど、私はレース後も番組を進行しないといけない。レース前とレース後でスタジオの空気はまったく違いますからね。
レースの振り返りをするのでレース中も自分が馬券を買った馬だけを見ていればいいわけではないし……。残り時間をフロアディレクターが伝えてくるので、それに頼りながら出演者のみなさんに話を振って、払い戻しも勝利ジョッキーインタビューも入るし、と。スリルはすごいですよ(笑)。
「テレビは、たまたまそこにチャンネルを合わせてくれる人がいるんですよ」
——大川慶次郎さんの頃と比べると、最近のフジテレビの競馬中継はかなりライトな雰囲気になっている印象です。競馬ビギナーにも優しい放送と言いますか。そのあたり、長年携われて意識されていたことはありますか。
福原 競馬番組だから知っている人しか見ていないですよね、という割り切りでもいいのかもしれませんが、テレビはやっぱりたまたまそこにチャンネルを合わせてくれる人がいるんですよね。
最近はウマ娘効果もあってますます競馬を初めて見る方も増えているでしょうし。そういう方々も置いてけぼりにしないようにというのはみんな心がけていると思います。それでいて、常連さんも退屈しないように、と。さじ加減ですよね。
——そのさじ加減も司会の福原さんの腕ひとつということですね。そう考えると、なかなかスリリングなお仕事なのだろうと思います。
福原 まさにそれをうまく捌ききる快感というやつですよね(笑)。アナウンサーの仕事としては難しいしスリリングですが、かなりおもしろい仕事だったと思います。
写真=末永裕樹/文藝春秋
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