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また、ダメ兄&しっかり妹の構図により、近年50周年プロジェクトで再評価されている「寅さん」的テイストを物語に加えたい思惑もある気がする。コロナ禍で人と人との交流が減り、窮屈さが増す時代において、いつでも自由で、人情に厚く、周り中を騒動に巻き込みつつも、笑いや温かな気持ちを与えてくれる存在に憧れを抱く人は多い。
加えて、今作の『ちむどんどん』の場合、舞台が沖縄であることも大きい。
《沖縄にはニーニーがたくさんいる》指摘が続出
『ちゅらさん』(2001年度上半期)では、マスコット人形のゴーヤーマンで大儲けしようと企てるが、失敗し、在庫の山を抱えて各地を売り歩くトホホな異父兄(ゴリ)が登場していたし、前述した『純と愛』も沖縄が舞台だ。
不思議なほどに沖縄を舞台にした朝ドラの「兄」たちはダメ兄だが、興味深いのは「沖縄 長男」で検索した結果。こんなコメントが目についた。
《ちむどんどんのニーニ―、沖縄長男ポジションへの解像度高すぎないか。それに甘い母親の解像度も》
《沖縄の長男はあんな感じ》
《長男教ってまだまだ沖縄では根強いよね~》
《沖縄は圧倒的に長男だいじだいじ文化》
実際に「ニーニーのような長男が沖縄にはたくさんいる」という指摘が大量に見つかるのだ。『ちむどんどん』の“ダメ兄”は寅さん的役割に加えて、“沖縄らしさ”も背負っているようだ。
沖縄本土復帰50年として描かれる『ちむどんどん』が多くの人に愛されるかどうかは、この「心優しいダメ兄」が愛されるかどうかにかかっている部分も大きいかもしれない。