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「なぜ朝ドラの兄は“聡明で優しい”から“ダメ兄”になったのか」NHK『ちむどんどん』で賛否渦巻く「働かないニーニー」が背負う“大事な役割”とは

2022/05/09
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 また、ダメ兄&しっかり妹の構図により、近年50周年プロジェクトで再評価されている「寅さん」的テイストを物語に加えたい思惑もある気がする。コロナ禍で人と人との交流が減り、窮屈さが増す時代において、いつでも自由で、人情に厚く、周り中を騒動に巻き込みつつも、笑いや温かな気持ちを与えてくれる存在に憧れを抱く人は多い。

 加えて、今作の『ちむどんどん』の場合、舞台が沖縄であることも大きい。

《沖縄にはニーニーがたくさんいる》指摘が続出

『ちゅらさん』(2001年度上半期)では、マスコット人形のゴーヤーマンで大儲けしようと企てるが、失敗し、在庫の山を抱えて各地を売り歩くトホホな異父兄(ゴリ)が登場していたし、前述した『純と愛』も沖縄が舞台だ。

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 不思議なほどに沖縄を舞台にした朝ドラの「兄」たちはダメ兄だが、興味深いのは「沖縄 長男」で検索した結果。こんなコメントが目についた。

《ちむどんどんのニーニ―、沖縄長男ポジションへの解像度高すぎないか。それに甘い母親の解像度も》

《沖縄の長男はあんな感じ》

《長男教ってまだまだ沖縄では根強いよね~》

《沖縄は圧倒的に長男だいじだいじ文化》

 実際に「ニーニーのような長男が沖縄にはたくさんいる」という指摘が大量に見つかるのだ。『ちむどんどん』の“ダメ兄”は寅さん的役割に加えて、“沖縄らしさ”も背負っているようだ。

ヒロインを務める黒島結菜(NHK公式サイトより)

 沖縄本土復帰50年として描かれる『ちむどんどん』が多くの人に愛されるかどうかは、この「心優しいダメ兄」が愛されるかどうかにかかっている部分も大きいかもしれない。

「なぜ朝ドラの兄は“聡明で優しい”から“ダメ兄”になったのか」NHK『ちむどんどん』で賛否渦巻く「働かないニーニー」が背負う“大事な役割”とは

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