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「初めて見たらぎょっとしますよね」住宅街を歩くと頭上に藁人形が何体も…… 木更津に残る奇妙な“風習”を追う

「初めて見たらぎょっとしますよね」住宅街を歩くと頭上に藁人形が何体も…… 木更津に残る奇妙な“風習”を追う

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「落ちるのは悪いことじゃないんです」

 取材を進める中で気になったのは、道路に落ちている人形があったことだ。海が近い木更津市は風が強く、落下は避けられない。厄除けが落ちてしまうのは大丈夫なのだろうか。

落下して紐だけが残ることもあるが、落ちるのは悪いことではないという ©文藝春秋

「昔は綱も藁だったから2月くらいには落ちていましたけど、今は化学繊維なので年末まで残るものも2~3体はあります。重いものから落ちるので、最初に落ちるのはだいたい藁人形。でも落ちるのは悪いことじゃないんです。作って飾るまでが大切で、落ちたら、道路脇に寄せたり、燃やしたり供養したり、誰かが家で保管していることもある。ゴミではないので捨てることはありませんね」(同前)

 藁人形はその名の通り藁で、ホームセンターでも売っていないので手作りだという。

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東京湾アクアラインを渡ると木更津市 ©iStock

「畑や田んぼもずいぶん減って、昔は簡単に手に入った藁も今では知り合いの農家に融通してもらったり、つなはりのために買っている地区もあると聞きます。その藁を縒り合わせて自分で作るんです。私も、前の年に落ちたものを参考に父から作り方を習いましたよ。自分たちの代で終わらせてはダメだと思っているので、若い人にも作り方を伝えていきたい。まぁ100歳くらいまでは作るつもりだけどね」(近隣住民)

 一見不気味な藁人形には、地域の住民を災いから守る願いが込められていたのだ。

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