ギャングは問題の原因であり、同時に解決のキーマン
「彼ら自身が社会問題の原因の一つであり、また同時に、解決のキーマンでもある。ギャングである彼らが変われば一石三鳥、四鳥、五鳥であると分かってもらうのです。それから解決法を話し合っていき、今度は一緒にみんなで実際に行動してみる。
例えば、彼らは小学校などでドロップアウトし、そこから道を踏みはずしたケースが多い。だからこそ地域の小学校でギャングになっちゃダメなんだという講演をしてもらうとか、社会側にギャングたちの辛い背景を理解してもらう啓発啓蒙活動を行うなど、みんなで解決策を考え実際に行動したのです。そのうえで、スキルを得たいのであれば、我々が資金を肩代わりしてでも職業訓練学校や教習所などに通うことができるようにし、彼らを後押ししました。
ある学校からは『ギャングはダメ』と入学を断られましたが、それならと交渉してギャングだけのクラスを設けてもらったり、入学初日で諦めようとするギャングを説得したりすることもありました。その後の進路は、例えば会計のスキルを生かして電機屋に就職したり、バイクやタクシーの運転手になったり、洗車のビジネスを始めたり、家業を手伝ったり…色々ですね。一言でギャングとは言いますが、彼らはひとりの若者なのです。それも、かなりシビアな背景を背負った。なので同じ若者として復活して、社会を変えていくことができればと考えたのです」
こうした支援に必要な現地までの航空券代や訓練費用などは、全て永井さんたちの自腹。募金やメンバーみんなでのバイトなどで活動費用を捻出した。初年度の予算はたった5万円だった。
キャンプファイヤーみたいな火を焚いて解散式
「2013年の夏ごろから取り組みが本格化していき、少しずつギャングを卒業した古参が生まれ、先輩が後輩を指導する循環ができ、最終的にはリーダー級を含む約60人ほどのギャング組織のメンバー全員を受け入れました。キャンプファイヤーみたいな火を焚いて、これまでの悪行全部を紙に書いて燃やした彼らの解散式は良き思い出です。それが2017年頃ですね。結局累計177人のギャングたちを受け入れました」
徹底した合理的方針のもとソマリア人ギャングの更生を進める一方、団体設立当初の目的は「ソマリアを救う」という、より大きな夢。
2017年頃より永井さんらは、テロ組織とつながりを持つギャングだけではなく“紛争当事者”である「テロリストの更生」という、より核心的な問題解決に突き進んでいく。(#2に続く)
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