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出所直前に母親にかかってきた1本の電話

 中学高校時代は「素直な子」(近隣住民)だったというが、長久保容疑者が決定的に道を踏み外したきっかけは「離婚」だったのではないかと母親は話す。

「農業を継ぎたいという思いがあったみたいで農業の短大へ進学したのですが、途中で同級生と結婚して中退してしまいました。お嫁さんもいい子でご両親も素敵な人でしたが、子供が生まれて2年もしないうちに離婚してしまいました。先方の家へ夫と一緒に『申し訳ないです』と頭を下げにいきました。子供ができたら独身時代のように自由に遊べなくなり、お嫁さんと子供を置いて逃げたくなったんだと思います。離婚した後は家に居づらくなったのか、すぐに出て行きました。どこで何をしているかもわかりませんでしたが、20歳も過ぎていたので捜索願も出しませんでした。2006年に父親がガンで他界した時も帰ってこず、消息が分かったのは10年前の逮捕でした」

「面会に行くことはない」「行ってどうするんですか?」

 2012年の事件で懲役9年の判決を受け服役していたが、今年4月の出所直前に、母親のもとに長久保容疑者から電話がかかってきたという。その電話で長久保容疑者は、今度こそ人に迷惑をかけず真面目に仕事をすると母親に誓った。

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「今年の3月頃、愛知県の刑務所から突然息子の荷物が段ボール7箱くらい送られてきました。荷物は開けていませんが、同じ時期に息子から『荷物を預かっておいてほしい』と電話がありました。10年ぶりの会話でしたが、私が『がんばんなよ。もう余計なことをするんじゃないよ。ちゃんと生きてね』と話すと、『はい』と返事していました。『出所したら就職するけど、いい社長で部屋も用意してもらった。大丈夫だから』とも言っていたんですけど……」

川越警察署 ©文藝春秋

 現在、長久保容疑者は埼玉で身柄を拘束されているが、母親は「面会に行くことはない」と突き放す。

「行ってどうするんですか? 田舎はご近所との助け合いで成り立っていますから、息子はもうこっち(山梨)には帰ってこられません。私も帰って来てほしくないので、人様に迷惑をかけずに1人でまともに生きてくださいというだけです。逮捕された時の顔は見ていられませんでしたし、息子の写真も全て処分しました」

 長久保容疑者は「自分の人生に嫌気がさした」と供述しているが、母親の心中はそれに輪をかけて苦しいものに違いない。