一方、オーサーも羽生を案じていた。トロントでの羽生は母親と2人暮らし。自宅マンションとリンクを往復する毎日だった。オーサーは前出の小誌インタビューでこう語っている。
「劇場に行くのも良いし、もっと人生を楽しんでほしいと思うんです。休みらしい休みを取ったことも無いかなと思うので、もっと冒険を追求するかたちで人生を生きてほしいです」
――平昌五輪に向けて、休むことも大事?
「私が決めることではないから。ユヅルの場合はエキシビジョンがとても好きで、彼にとってはそれが休みで、楽しみです」
フィギュア関係者が語る。
「同じくオーサーの指導を受け、今回の五輪でも羽生のライバルの一人と目されるスペインのハビエル・フェルナンデスは練習に寝坊するなど羽生とは対照的。手はかかりますが、オーサーはそれも人間らしいと感じているようです。欧米のコーチは、表現力を高めるためには恋をしたり、遊んだり、人生を楽しむことも必要と考えているのです」
羽生を「人間としては謎が多い」
オーサーは昨年10月、ロシアのスポーツサイト「R-Sport」のインタビューで、羽生について、
「アスリートとしてはよく知っている。ただ人間としては謎が多い。僕のジョークに笑うから、ユーモアのセンスはあるようだ。
ただ、五輪に集中し過ぎている。結果も大事だが、たまには楽しんで欲しい。でも羽生だから仕方ないね」
そして、インタビューの翌月、事故が起きる。NHK杯の練習で、羽生は右足関節外側靱帯を負傷したのだ。
「通常五輪シーズンは前季までに身につけた技に磨きをかけていくもの。ですが、羽生は5種類の4回転ジャンプを跳ぶ18歳のネイサン・チェンら若手がジャンプの種類を増やすのを見て、自分も!と熱くなった。NHK杯で負傷したのも今季からプログラムに入れた4回転ルッツの転倒でした」(スポーツ紙記者)
スコア重視のプログラムを組むオーサー
だが、オーサーの戦略は違った。