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〈プロ転向〉「人間としては謎が多い」“最強コーチ”ブライアン・オーサーが明かしていた羽生結弦への“意外な心配事”

 7月19日、都内で記者会見に臨んだフィギュアスケーター・羽生結弦(27)は、注目されていた去就について「プロのアスリートとしてスケートを続けていくと決意」したと語った。これからは競技会に出場しないが、プロスケーターとして4回転半ジャンプへの挑戦を続けていくという。

 この発表を受けて、66年ぶりの五輪連覇の立役者であり、長年にわたって彼を指導してきたコーチのブライアン・オーサーとの“最強コンビ”について詳報した「週刊文春」の記事を特別に公開する。(初出:週刊文春 2018年2月22日号 年齢・肩書き等は公開時のまま)

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 羽生結弦の五輪連覇の鍵を握るコーチのブライアン・オーサー。羽生は求道者のごとく高みを目指すが、金メダルだけを狙うなら、それは危うさを孕んでいた。選手の美学とコーチの戦略の葛藤の最中、大ケガが羽生を襲う。最強コンビに、今何が起きているのか――。

金メダル請負人のブライアン・オーサー

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「ほとんど痛みはありません。100%で戻ってくると確信しています。羽生選手を見くびらないでください」

 2月6日、羽生結弦(23)のコーチ、ブライアン・オーサーはあくまで強気だった。バンクーバーではキム・ヨナ、ソチでは羽生に金メダルを獲らせた。羽生のコーチになって6年。2人の距離は、トップアスリートならではの美学と戦略の違いによって、時に近づき、時に離れもした。

バンクーバー五輪ではキム・ヨナのコーチを務めた

 羽生は昨年11月のNHK杯の公式練習で転倒し、右足首を負傷。氷上練習は今年に入ってから始め、16日にぶっつけ本番で個人ショートプログラムを迎える。五輪連覇の鍵を握る二人三脚は、無事ゴールまでたどり着けるのか――。

2012年からの師弟関係「戦略眼はフィギュア界随一」

 2人の師弟関係が始まったのは2012年のことだ。

 仙台出身の羽生はシニアに上がって2季目のこの年の3月、仏ニースの世界選手権で3位に入って世界を驚かせた。そして5月、更なるステップアップを目指して、キム・ヨナを金メダルに導いたオーサーの指導を受けるためにトロントに渡った。

「オーサーの戦略眼はフィギュア界随一です。特に、勝つためには何点が必要かという見極めがすごい。勝つためのスコアから逆算してプログラム構成を作るのです」(フィギュア担当記者)