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時間がもう少し遅ければ、いつもの駐車場が満車じゃなければ…
純歌は事故前日の電話で、仲本に「そんなに朝早くから来なくてもいいよ」と告げていた。ところが仲本は、朝9時に会いに来ることにこだわったという。
「仲本さんとは毎日のように、昼過ぎから麻雀をするために横浜の雀荘で待ち合わせをしていたので、『いつものようにお昼でいい』と言ったんです。だけど『社長からいい報告を受けて、早く会いたいから9時に行くよ』って」
しかし、この日は仲本がいつも車を停めていた、純歌が住むマンション隣の駐車場がたまたま満車だった。そこで仲本は別の駐車場に車を停める。
「それで普段は近寄らないはずの、信号のない交差点を渡ろうとしてしまったんです」
時間がもう少し遅ければ。いつもの駐車場が満車じゃなければ。私が横浜に住んでいなければ……。悔しそうな表情で純歌が続ける。
「今は寂しくて、辛くて、会いたくて。残念で仕方がないです」
純歌が仲本と最後に会話をしたのは、事故当日の朝、6時27分にかけた電話だった。