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横切るリス、緑に覆われた約12キロ…北海道で1年に1ヵ月だけ通行できる「幻の道路」をドライブすると?

2022/11/26

genre : ライフ, 歴史,

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カーナビで検索できない出発ゲートを探す

 チョボチナイゲートの周辺に人家はなく、旭川方面から走ってくると、左側に金網が張られている先でゲートの入口が唐突に現れる。左折の交差点であることを示す標識がないので、ゲートに気づいてもすぐに左折できず、少し先まで行ってUターンしてくる車も少なくない。

チョボチナイ橋上から見たチョボチナイゲート前交差点。左の直線道路が旭川方面、右折したところがゲート

 そうした自動車の多くは、カーナビにゲートの位置が表示されないのではないかと思われる。私が旭川で借りたレンタカーのカーナビも、チョボチナイゲートはおろか、そこから道道1116号線の途中までは道路自体が表示されなかった(Googleマップではゲート名と道路が表示される)。

 ゲートの前では、愛車を停めて記念撮影をする人も多い。ライダーならゲートの片隅にバイクを停めやすいが、四輪車はゲートの真正面か、チョボチナイ橋の先にあるスペースに停めるほうが通行の妨げにならないだろう。チョボチナイ橋からは穏やかな忠別湖も眺められる。

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開通日や期間の発表もギリギリまでわからない理由は…?

 ゲートの入口には「チョボチナイゲート」と大書された看板のほかに、「開通 富良野上川線」の文字と、その対象区間と期間を掲示する看板が立てられている。

開通期間を表示するチョボチナイゲートの掲示板

 ここに「開通」の文字が掲げられていたのは、今年は「令和4年9月8日11時から令和4年10月13日11時まで」、つまり35日間だけ。この看板に「開通」の文字が掲げられてゲートが開いている状態は、それ自体がとてもレアな光景であることを、記念写真を撮る訪問者はみんな知っているのだ。

 積雪のために冬期通行止めとなる道路は北海道中にあるが、雪が融けても9月まで通行止めが続くのは、「地滑りの危険がある」ことが理由とされている。

 もともとは冬期以外は通行できる想定で建設されたのだが、平成24年の開通後、春先から雪解け水の影響で地下水位が上昇し、地滑りが発生する危険があることが判明したという。その結果、翌年の冬期通行止めが終わっても4年以上ずっと通行できず、平成29年9月になってやっと1ヵ月間だけ通行が認められるようになった。

 冬期通行止めが終わっても9月まで待たなければならないのは、雪解け水の水量が落ち着いて地滑りの危険が減少するのが9月頃だからである。自然が相手だからか、キリ良く「9月1日~10月31日」というような期間設定にはならない。

 今年(令和4年)も、「9月8日11時」との開通日時や開通期間が発表されたのは、9月に入ってからであった。この道路を走るために飛行機で現地を訪れようとする(私のような)遠方からの旅行者にとっては、スケジュール調整に苦労させられるところだ。私が訪れたのは、9月のある晴れた平日である。