「冗談で言ったひと言が、彼をけしかけたことになったのかも…」
容疑者とスタンガンを繋いだのは、職場の同僚との何気ない会話だった。勤務先で佐藤容疑者を知る人物が語る。
「彼は比較的高い技術を求められる先行技術開発室に勤務していました。そんな佐藤から『実は、こういう事があって財布を盗まれました』と置引きに遭ったから取り返しに行くつもりだという話を聞きました。作業中ということもあって、それ美人局とか、なんか危ないやつじゃない? と半ば適当に答えたんです。すると『そういう時ってどうしたらいいんですかね』と真面目な顔で相談されました」
この時、同僚との会話でキーワードが飛び出した。
「警察に言えばいいと思うけど、それでも行くって言うならスタンガンでも持っていけば? と、自分としては冗談のつもりで言ったひと言が彼をけしかけることになったのかもしれません。勤務態度に問題はないし、おとなしい子だったから、こんな事件を起こしたなんて聞いてまさかですよ……。佐藤はあの時、本気で悩んで相談してきたんだと思うと不甲斐なく、申し訳ないです」(同前)
一方で「俗に言う“キレたら一番やばいタイプの人”」という証言も
一方で、佐藤容疑者の大学時代の同級生はこう話す。
「キャンパスが一緒で、同じ専攻の研究発表会に参加する機会があって飲みに行く事が何度かありました。いつもは温厚で、読み終わった漫画をくれたり、筆記用具を忘れた時、貸してくれてそのまま譲ってくれたり、とにかく優しい人ってイメージでした。でも、ある日、印象がガラッと変わったんです。私が彼のことをいじるというか小馬鹿にしたことがあって。急に胸ぐらを掴まれて血相を変えて『おい!』と顔の近くで叫ばれた事がありました。周りが止めようとしてくれたけど、彼は当時から体が大きくて引きはがすのにも苦労していました。友人たちが必死になだめてくれて、殴られたりはしませんでした。俗に言うキレたら一番やばいタイプの人でしたね」
渋谷の路上で起きたスタンガン強盗という衝動的な犯行の裏には、容疑者の直情径行な性格があった。