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とどまることのない「インターネット荒らし」スタイル

 物議をかもす「インターネット荒らし」スタイルはとどまることがなかった。2020年には、新型コロナウイルスワクチンへの疑念やリベラル批判をツイートしていき、政治議論を巻き起こしていった。そこから1年でツイッターフォロワーは2倍になり、1億人に達したという。

「キャラ変更」によって「大衆文化アイコン」になったイーロン・マスクだが、面白いのは、ポップカルチャーのスターの間でも賛否がわかれているところだ。 

「賛否がわかれる哲学者兼インターネット荒らし」という像は「我が道を行きながら巨万の富を築きあげた成功者」とも言い換えられる。それゆえ、支持が集まるのは、ハングリー精神あふれるヒップホップ業界だ。大統領選挙に出馬したお騒がせラッパー、イェ(旧名カニエ・ウェスト)との親交が有名だが、リル・ウージー・ヴァートやマシン・ガン・ケリーといった若手スターもマスクに肯定的に言及する楽曲を発表している。 

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 政治領域でも暴れる「インターネット荒らし」として、反発も大きい。特に、近年のマスクが「おちょくり」つづけているリベラル派。今回のTwitter買収を受けて、同サービスの利用をやめる芸能人も見られる。

 主な理由とされるは「言論の自由」を重視するマスクが投稿削除ルールなどの規制をゆるめることで、暴力的な差別主義者が野放しの「地獄」状態になるという見立て。ベテラン歌手トニー・ブラクストンは「(Twitterは)私と子どもを含む有色人種にとって、安全な場所ではなくなってしまった」と明かした。人気モデルのジジ・ハディッドも「ますます憎悪と偏見の肥溜めになっていっている」と語りTwitterから去っている。 

 イーロン・マスク体制下のTwitterが「地獄」のようになるかは、まだわからない。しかし、本人としては、とっくのとうにそのような場所にいる心持ちかもしれない。

「キャラ変更」直前の2017年、「世界を変革する企業家」となった代償として絶えず精神的苦痛にさらされていることを明かした彼は、まことにイーロン・マスクらしい哲学を明かしていた。「自分で地獄行きの切符を買ったんだ。だから、今いる地獄を責めるのはフェアじゃない」。