そして、これらの問題は役所が厚生労働省も東京都庁も雑だからイカンという話だけでなく、共通しているのは国家公務員や地方公務員における職員の超激務に問題があるように思うのです。組織図を見る限り、この人員ではこれらの一つひとつの政策内容を考案し、熟慮して詰めて省令として打ち、都も受け止めて問題なく実施までもっていくのは至難と言えます。
「最近の役所は仕事が雑だ」と叩くよりも、これだけの多くの守備範囲を任されて過積載にしてしまっている構造的な問題が、結果的に利益相反による政策検討という悪しき土壌を生んでしまうのでしょう。いわば、監督者であるはずの行政が、問題やコミュニティに詳しくないので、結果的に言われるがままNPOや社団法人に業務を丸投げせざるを得ないのです。
BONDプロジェクトや若草プロジェクトなどの個別の団体が悪い、問題だという話ではなく、最初の厚生労働省のお座敷の立て付けにもう少し工夫があるべきだったのだと思います。
利益関係については、やはりきちんとしたディスクロージャーが必要で、誰からカネをもらって、どのようなコミュニティを構成している人なのかが明らかになったうえで、政策議論をするには本来これらのダイレクトな利害関係者は政策議論から排除するか、利害関係者ヒヤリングという形で分離する必要があるように思います。少なくとも、政策の方針を定める審議会において、当事者である人たちが「私たちの活動は大事だからカネを出せ」と好き放題言えてしまう状況が、まずいのです。
おカネを隠したり飛ばしたり…コロナ禍で起きたちょっとしたバブル
さらに、コロナ禍になって以降、当時の安倍晋三政権と後継の菅義偉政権は、社会不安に対する予算もまた計上しており、その中でも別財源である休眠預金活用基金からも福祉予算を捻出するなど、あらゆる手段で国民にお金が還流するような政策手配をしていました。経済活動の一部が制限され、若い人たちがバイトなどで働いたり、大学など学校に通ったりすることができなくなり、若者全体の貧困とコロナ対策が隣り合わせとなっていることに対して危機感があったからです。
その結果、界隈でちょっとしたバブルが発生し、不思議な土地でアパートを建てたり、期末の数字が合わないのにそのままになっている社団法人やNPOなどが続出してしまっているのが昨今です。ちゃんとした監査がなく、納税もしないためチェック機能が働かず、コロナ対策費などでおカネが降ってくるのですから、この手の社会事情に知識のある人であれば、容易におカネを隠したり飛ばしたりすることができます。
特に、Colaboの不審なアパート建設においては、経団連系の一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)によって本来は国民の財産である休眠預金の活用の一環としてコロナ対策費が積まれ、それが資金分配団体である公益財団法人パブリックリソース財団なる団体で公募が行われた結果、総事業費1億円という途方もない金額が採用されたColaboに支給されています。活動計算書や貸借対照表にある1億円の助成が端数なしの抜き身で掲載されたものの、その金額で建設されたシェルターは川崎市のアゼリアホーム社が手がけた擁壁の上の土地に2階建てのアパートにすぎず、外形的にはとても1億円の物件とは言い難いものです。
本稿で何度も税金つかみ取りと書いていますが、一事が万事この調子であって、被害女性を救済する活動のために助成されたり委託されていた税金や休眠預金が、実際には利益相反の末に問題財団や事業者との取引の果てに消えていたのだとするならば、おおいに騒がれるべきだとも思います。
ただ、仁藤夢乃さん本人がそのような悪い大人の知識を持って少女たちに接しているとはとても思えません。むしろ、前述のように被害少女たちと本気で向き合って活動を続けているからこそ、社会的に評価され、この問題においては仁藤さんが第一人者であることはまごうことなき事実です。むしろ、本当に救済されなければならないのは一連の尊い活動に身を捧げてきた仁藤夢乃さん自身なのではないか、とすら思います。
本稿では、各方面に散った問題意識をテーマごとに取りまとめて論じてみたのですが、超長くなってしまいましたので、ひとまずはこの辺で。どうか各位、燃え続ける炎の黒煙を減らすためにも、『地獄の門』の戸締まりを心から願う次第であります。