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「地獄の門」と化したColabo騒動、東京都や国に問題はなかったのか

#2

2022/12/15
note

緩やかなNPO会計方針の「Colabo」

 東京都も、2017年までは、忙しいなりにきちんとした公的資金交付先の団体の資金使途については職員がそこそこ細かく内容を精査していたと説明しています。その後、2017年の年度末から2018年暮れにかけて、Colaboの仁藤夢乃さんが、ゆかりの深い旧立憲系会派や共産党系だけでなく、都民ファーストの各都議にも働きかけ、あろうことか「東京都から細かく精算について書類仕事を求められて煩わしいので、善処して欲しい」とかいう陳情をしてしまいます。

 Colaboは一般社団法人であり、より厳格な公益法人会計方針ではなく、緩やかなNPO会計方針を採用しています。過日はほとんどお小遣い帳のような単式簿記で許されていたものが、2021年6月「特定非営利活動促進法の一部を改正する法律」により改正NPO法が施行されて、事業会社での一般会計方針に準じた複式簿記が義務付けられました。

 改正に至った背景は、NPO法人が脱税の受け皿になったり、公的資金を注入したのに親族の会社に発注をかけて資金を飛ばすなどの不正が横行したため問題となっていたところ、2014年に復興支援を手掛けたNPO法人「大雪りばぁねっと。」での巨額不正事件(事業費7億9,000万円)で、代表であった岡田栄悟さんが業務上横領容疑で逮捕、懲役6年の実刑判決が確定するという事件もありました。舞台となった岩手県や山田町のズサンな事業検査によって詐取が発覚することなく、しばらく放置されることになり、摘発が遅れ被害額が増えたことも遠因となったわけです。

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 本件は完全に詐欺事件であり、個人的な遊興費や車両購入に充当していたという悪質性で全国的な事件となったのに比べ、Colaboで不正とされるものは明らかに仁藤夢乃さんの善意の活動からくるものです。また、金額も些少であることなどから、本来は計画や報告書の修正・再提出、一部問題となる公金の返還、経理業務の適正化による再発防止の宣言が行われれば、大ごとにはならなかったはずだというのは前述の通りです。「謝ったら死ぬ病」というのは、ときとして大変なことを起こすなあという教訓を新たにするのであります。

 本来であれば、東京都もこれらの問題も踏まえて適切な公金支出先の団体の監理を行おうとしていたものの、都議からの陳情によってある種の手心が加わった過程があったとするならば、適切な調査と結果発表、再発防止策の徹底を行って欲しいと願うところであります。