この時代劇は面白い――!
そう、さまざまな場で推していながら、実はあまり観る機会に恵まれない作品がある。
今回取り上げる『柳生武芸帳 片目の忍者』は、その最たるものだ。
今までVHSでしか出ておらず、名画座で上映されることも少なく、そのためCSの専門チャンネルでたまに放送されるのを待つしかなかった。それが、いつの間にかU-NEXTで配信されていたのだ。いつでも誰でも観られる機会ができたので、せっかくなのでこの傑作を改めて紹介してみたい。
本作は、近衛十四郎が剣豪・柳生十兵衛を演じたシリーズの最終となる第八弾。「柳生武芸帳」を巡る暗闘を描いた五味康祐による原作のエピソードは前作までで終わっており、本作は高田宏治脚本によるオリジナル作品だ。
幕府の軍事力強化のためにイスパニアから購入した新式銃二千五百挺が何者かに奪われる。首謀者は紀州藩の城代家老と九鬼水軍。彼らは砦に立てこもり、幕府への叛乱を決起した。幕府は隠密裏にこれを打ち倒すべく、柳生忍者六十四名を派遣する。これを率いるのが、柳生十兵衛だった。
最強の十兵衛&柳生忍者に対し、敵はどう立ち向かえば映画として盛り上がるか――。高田はそのアイデアを練る。そして、とてつもない設定を考えついたのだった。
忍者は、影に潜むことでその術を自在に使える。剣豪は、至近距離でこそ技量を発揮できる。その双方を封じようとしたのだ。背後に断崖がそそり立つ広い平原に、巨大な要塞を立てる。それならば、どこにも影はできないため忍者は無力化される。さらに高い防壁を立て、砦に近づこうものなら二千五百挺の鉄砲が一斉に放たれるのである。
では、柳生はこの状況をどのように突破するのか――。柳生からすれば、砦の内部に十兵衛一人を送り込みさえすれば、あとは彼の剣術により敵を打ち倒すことができる。そうなると、残る忍者はそのための捨て石となる。
ひたすら降り注ぐ銃弾の下を匍匐前進で進み、「人間の盾」となり十兵衛を囲みながら砦に接近、身体に爆弾を巻いた忍者たちの自爆によって壁を破壊――。スペクタクル満点のド迫力のアクションは、さながら上質な戦争映画。難攻不落の要塞から次々と銃弾が飛んでくる様は、『プライベート・ライアン』のノルマンディー上陸作戦のよう。攻め手が近代兵器で武装されていない分、戦況のスリリングさはむしろ本作が勝る。
時代劇ならではの自由さを極限まで追求したといえる一本だ。まだご覧になっていない方は、この機会にぜひ。