生まれたままの姿でニッコリと微笑む、うら若き女性。そのかたわらには、時にポエミー、時に露骨な言葉が添えられている。
1990年代以降に美少女コミック誌を手に取っていた者ならば、それらの読者ページで必ずや“彼女たち”の姿を目にしたはずだ。
イラストの投稿主の名は、三峯徹(55)。30年にわたって美少女コミック誌にイラストを投稿し、伝説のハガキ職人として2010年に『タモリ倶楽部』に出演、2020年には「ヤングコミック」で伝記漫画『少年画報社版 学習まんが 少年少女人物日本の歴史 三峯徹』の連載がスタート。
そんな彼にハガキ職人となった経緯、イラストの女性“三峯ギャル”を描くうえでのこだわり、「三峯が載る雑誌はつぶれない」といった都市伝説などについて、話を聞いた。(全2回の1回目/続きを読む)
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俳句がフッと浮かんできた
――三峯さんは「知る人ぞ知る系の極地」と呼んでも過言ではない、伝説のハガキ職人です。そんな三峯さんの出世作や代表作を教えてください。
三峯徹(以下、三峯) 代表作ねぇ……。「朝顔イラスト」って呼ばれているものが代表作として、よく取り上げられますよね。「漫画ホットミルク(1991年8月号)」に掲載されたイラストで、朝顔のツルと葉っぱが女性に絡みつく姿を描いたやつ。余白に「朝顔に 彼女とられて もらい泣き」という句も添えてあるんですよ。いま考えると触手系、いや緊縛プレイですよね。ツルの縄で縛れるのかなって感じですが。
――添えた句は、江戸時代の女性俳人・加賀千代女による句のパロディですよね。なかなか思いつけないアイディアではないかと。
三峯 元ネタになった加賀千代女の俳句は「朝がほや 釣瓶とられて もらひ水」なんですけど。「朝顔イラスト」が掲載された「漫画ホットミルク」には、なんでも描いていいフリーな投稿コーナーがあって。ちょっと他の人が描きそうもないものを送ろうと悶々としていたら、加賀千代女のその句がフッと浮かんできて。
そこから朝顔の葉っぱとツルに絡みつかれるギャルのアイディアも浮かんで、一気に描いたんですよね。俳句とイラストがピタリとはまって「やったー!」と思いましたね。ほんと、あれは自分でもうまくできたなって。
掲載されたときは「この味はちょっと出ないと思う」なんて編集者さんのコメントが書かれていて。ほかの雑誌では「ヘタ」扱いされていたこともあったから「ああ、これからも俺は絵を描いてもいいんだ」って思えましたもんね。まぁ、あれが三峯徹の立ち上がりみたいなもんです。
――加賀千代女の句がフッと浮かぶって、そうそうあることではない気がします。
三峯 漫画家になりたかったんでね。漫画を描くうえで、いろいろとものを知っておかないとダメだとは昔から考えていたので。見たり、読んだり、聞いたりしたもので、気に入ったものがあれば吸収しておかないと。そうやって取り込んだものは、いまでも活きてますね。