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見過ごされがちな“とてつもない不平等”…消費税を社会保障財源にしてはいけない“納得の理由”

『増税地獄 増負担時代を生き抜く経済学』より #1

2023/02/10

genre : ライフ, 社会

note

 私は、山本代表の主張する経済理論は非常にまともだと思っている。彼の理論は、経済学者で立命館大学教授の松尾匡さんがサポートしている。間違ったことなど言っていないのだ。

消費税を社会保障財源にしてはいけない理由

 私はそもそも「消費税を社会保障財源にしてはいけない」と考えている。第1の理由は、社会保障負担を消費者だけが負担することになるからだ。

 厚生年金保険料や健康保険料などの社会保険料は労使折半、つまり、企業も半分を負担している。

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 ところが、消費税は消費者だけが負担する。高齢化で苦しいからみんなで協力して支えましょうと言っているときに、それをすべて消費者に押し付けることになるのはどうだろうか。

 それが消費税を社会保障財源にすることの本当の意味なのだ。企業にとってこれほど都合のいいことはない。自分たちにはなんの負担もなくなるわけだから。

 そして第2の理由は、消費税の逆進性だ。

 低所得者層ほど収入に対する税負担率は高くなる。低所得者の場合、収入の8割程度を消費に回しているから、8割に消費税がかかる。

 

 富裕層は収入の3~4割しか消費に回していないので、それだけ税負担率は低くなる。消費税率が同じ10%でも、低所得者は8割×10%で実質8%だが、富裕層は3割×10%で実質3%にしかならない。とてつもない不平等が存在している。

富裕層は消費税を1円も支払わずに暮らせる

 それどころか、富裕層は消費税を1円も支払わずに暮らすことも可能だ。よく聞くのは、「消費税は誰でも買い物したときに支払うから平等だ」との主張だ。しかし、現実にはそんなことはない。少なくとも私の知っている富裕層で、消費税を自ら負担している人はほとんどいないのだ。

 それはなぜか。富裕層の多くは自分の会社を持っている。彼らの暮らしは、大部分が会社の経費で賄われている。たとえば庶民は自分のお金で車を買う。しかし、富裕層は会社に車を買わせている。

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