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流行依存がもたらす負の連鎖

 調布市で起こった、この小さな「焼き肉戦争」。これは外食産業の構造的な問題の一つ、「低い参入障壁」がもたらしたものと言える。

 外食店を開くのに免許や資格は必須ではなく、異業種の企業や未経験者でも参入しやすい。「居酒屋の神様」とも言われる楽コーポレーションの創業者、宇野隆史氏は「トマトを切れば『冷やしトマト』になる」と外食の妙味を語る。料理やサービス、接客などの様々な要因を組み合わせた結果として顧客満足につながれば、外食店は成功し得る。

 その反面、外食店はジャンルや人気メニュー、店内デザインなどで有力店を模倣することが珍しくない。「この店、あの店と似てるね」。一度はそんな思いを抱いたことがある人は多いだろう。有力店を模倣したとして係争に発展した例もある。

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 模倣が悪というわけではないが、流行の業態が見つかると競合企業が一気に押し寄せる傾向があるのは事実だ。製造業が特許権で独占するようなやり方は取りにくいため、誰かが人気の外食店を「発明」したら、他社がそこからいいところを学び、別の店舗として開発していく。

 コロナ禍でテークアウトに強みがあると分かったハンバーガー店も、競争が急に激しくなった。東京商工リサーチによると、2021年度のハンバーガー店の運営企業の倒産件数は6件。2015〜2020年度は年1〜2件にとどまっていたが、2014年度の7件以来の多さとなった。

 2014年度といえば、国内の「マクドナルド」の調達先である中国の食肉加工会社が使用期限切れの鶏肉を扱っていたことが問題になり、ハンバーガー市場全体の信用が落ち込んだ時期だ。東京商工リサーチの担当者は、「流行の業態に大手チェーンが業態変更したり、中小企業が参入したりして、結局撤退してしまうパターンは外食に目立つ」と話す。

 流行の業態に外食企業が集中するとオーバーストアの状態になり、当然、過当競争が起きる。その中で抜きんでた価値を提供できなければブランドは陳腐化し、やむなく安売り競争という消耗戦に陥っていく。

 その結果、利益率が低下し、人件費に充てられる余力がなくなる。安い給料では社員もアルバイトも集まらず、いつしか「ブラック職場」になっていく。限界を超えたコスト削減はメニューやサービスの品質低下も招き、じわじわと消費者が離れていく。

 これが外食店を閉業に追い込む「負の連鎖」だ。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。