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「この波に乗らないと沈んでいくだけだと思っています」AIが使えない人材を待ち受けている“末路”とは

ChatGPTのホントの話/深津貴之インタビュー #2

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なぜChatGPTが注目されるのか

深津 ChatGPTが注目を浴びているのは、「一番最初に出てきた」こと。それから「使えるサービスの形にした」ことが大きな要因だと思います。他の会社もAIの研究はしていたけど、サービスとして成果公表はしていなかったんですよね。

――てっきり、現在インターネットのプラットフォーマーとして覇権を握っているGoogleがAI分野でも最初にサービスを作るものだと思っていました。

深津 多分みんなそう思っていましたよね。でも、GoogleはAIの公開には及び腰だったんですよ。ChatGPTみたいな「確率的に正しいっぽいことをなんでも言うよマシン」みたいな、言っちゃ悪いけど「雑」なものをGoogleが作ったら、あっという間に訴訟に巻き込まれますし、検索しなくても知りたいことがわかるAIチャットというサービスは、今のGoogleのビジネスモデルと真っ向から食い合いますしね。

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――そんな中でOpenAIやMicrosoftに先を越されてしまったと。

深津 そうそう。Microsoftも『Googleをブッ倒すチャンスだから自社製品全部にAI入れるぜ!』的な動きをして、盛り上がっていますね。それでGoogleはあわてて2022年末に「AIめっちゃ開発するわ!」と宣言するハメになっていました。

――インターネットの大規模プラットフォーマーの世界でジャイアントキリングが起こり得そうな状況になっているんでしょうか。

深津 Microsoftにとっては100年に1度あるかないかの好機なんじゃないでしょうか。ビル・ゲイツがカムバックするという噂も出るくらい、経営陣もみんなやる気満々です。彼らのイメージ的には“蒸気機関”とか“活版印刷”とか“インターネットの再発明”ぐらい、産業革命のようなインパクトを感じているんだと思います。

――このままGoogleへの下剋上はできますかね?

深津 Microsoftはそれを目指してるだろうけど、実現するかな……。

 というのも、今のところChatGPTには2つの問題があります。「ナチュラルにウソをつく」「開発にも利用にもお金がかかる」という2つです。ウソをつく問題は技術の力で少しずつ解決に向かうだろうけど、コスト面は難しい問題なんですよ。