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「この波に乗らないと沈んでいくだけだと思っています」AIが使えない人材を待ち受けている“末路”とは

ChatGPTのホントの話/深津貴之インタビュー #2

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AIが使えない人材はどうなっていく?

――技術が爆発的な発展を遂げる中、成長しようとトライし続けることは間違いなく大切ですよね。では、たとえば10年後くらいに、AIが使えなければ仕事のうえで待遇が悪くなるような時代が来るとは思いますか?

深津 どうなんでしょう。AIが使えるかどうかは、車の運転免許を持っているかどうかと同じようなものだと思っています。みんなが馬に乗っている時代なら、運転ができるだけですごいこと。みんなが車に乗れる時代なら、免許を持っているのが普通のこと。みんなが車に乗れるのに、免許を持っていなければ当然不利……そんな感じですよね。

 だから、先にやっておくのが一番お得だと思います。みんなが車の免許をとってから、おっかけてもいいことはあまりありません。もちろんコストなどのリスクはありますが、長い目で見れば先にやる方が利益は大きくなるんじゃないでしょうか。

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――最後に、AIの話題になるとだいたい議論にのぼる「AIが人間の仕事を奪うか」という点について、深津さんはどう考えていますか?

深津 この話題になると「AIはラーメンをその場で食べて、うまいとかまずいとか言えない」って、僕はよく言います。今のAIは外に出てリアルな世界を統合的に体験・調査できるわけではありませんから。

 メディアに関連する話をすると、調査報道に強みがあるメディアは大丈夫なはずです。一方で「世の中の一次報道をただ発信するだけ」みたいなメディアは厳しい局面に立たされるでしょう。ChatGPTが得意とするのは、まさにそういう作業ですから。30分遅れでよければ、何分の1かのコストかつ、高精度で同じことをやれてしまいます。自分たちのコンテンツにどう価値をつけるか、本気で悩む時代が来そうですね。

 あとは「意思決定」と「謝罪」も人間にしかできないことです。誰も「AIが決めたことです」とか、AIに謝られたからって、納得できないじゃないですか。そういう意味でAIが人権を得るような、文明のずっと先の時代になるまでは、意思決定と謝罪はおそらく人間に残された仕事のままでしょう。

※2023年2月28日に取材を実施

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