動物は、鉄道の大敵である。

 もちろん、かわいい犬やネコが線路上に逃げ出して大わらわ、みたいなほのぼのエピソードのお話ではない。文字通りの大敵、列車の安全すら脅かしかねないケモノたちのお話である。

北海道エゾシカ衝突事故は毎年2000件以上

 と、こう言われてもピンとこない人もいるだろう。実は、山野を走るローカル線では、野生動物と衝突して運転ダイヤが乱れる事象が多発しているのだ。特に深刻なのは、北海道。北の大地を走る鉄道にとって、降り積もる雪以上に厄介なのが“エゾシカ”だ。群れをなして原野を駆け抜ける彼らが、しばしば列車の進路を阻んで衝突……。そんな事故が、毎年2000件以上起きているという。

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 こうした動物との衝突は北海道に限ったことではなく、山間部を通る路線ならば日本全国どこでも起きている。都会では人身事故がダイヤ乱れの厄介者だけれど、人の少ない田舎では野生動物が厄介者なのだ。

 衝突する野生動物は、クマにイノシシ、たぬきにハクビシンといろいろだけれど、特に困りものなのがシカ(エゾシカ含む)だ。理由はよくわからないけれど、シカは鉄分を補給するために線路の近くにやってくるらしい。それこそ鉄でできているレールをペロペロなめたり、レールと車輪の摩擦から線路際に飛び散った鉄粉をなめたり。それが、列車との衝突という悲劇を生んでいるのである。

根室本線の末端、花咲駅(廃止)付近を走る普通列車(キハ54形)